歪んだクールジャパン政策:補助金適正化法無視で経産省から支払われる映像産業振興機構への裏金「広報費」20億円

経団連の思惑で動く342億円補助金と行政意思決定

今、諸手を挙げて推進されている「クールジャパン戦略」のコンテンツ海外展開促進事業(J-LOP)と称し平成24年度補正予算から数えること4事業、合計342億円の税金が拠出されている。そしてこの事業をこれまで連続で全て受託しているのが特定非営利活動法人映像産業振興機構である。

映像産業振興機構とは2004年の経団連の「知的財産推進計画」の提言を受け設置された法人で、経団連のコンテンツ部会長が理事を務めている。そして政府に対し「コンテンツ海外展開促進事業」の予算要望を毎年行ってきたのが経団連である。また、この補助金が始まった経済産業省の概算要求資料にはすでに「映像産業振興機構の受託を想定」と事業委託先の意思まで示されている。

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基金設置法人に出向する広告代理店社員

このように経団連が設置提言し、理事を務める法人に、経団連が政府に要望した補助金342億円が流れる仕組みが存在するだけでなく、その基金の運用実態にも大きな問題が存在する。

映像産業振興機構には経団連コンテンツ部長兼同機構幹事理事の依田巽氏に近い人物とされる株式会社クオラス社員の外丸智宏氏が出向しており、コンテンツ海外展開促進事業基金(J−LOP)の公式サイトの(www.j-lop.jp) ドメインは、外丸氏の個人名で取得されていた。

映像産業振興機構に基金設置法人が決定したとする公募採択は2013年3月14日に行われており、報道発表があったのは同年3月16日である。しかし、このドメイン取得日を見てみると、外丸氏は事前に知り得たかのように採択日の前の同年3月11日に当該ドメイン取得している。

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出所不明の税金「ジャパンデイプロジェクト」の疑惑

この補助金にかかる問題は、2015年に発表された「ジャパンデイプロジェクト」というイベントに存在する。

この事業はカンヌ映画祭、パリのジャパンエキスポ、台湾漫画博覧会、カンヌMIPCOMほか年間5つのプロモーションイベント実施を計画し、映像産業振興機構、株式会社クオラス、株式会社アサツーディケイがコンソーシアムを組み運営に当たっていた。また、先に挙げたクオラス社員の外丸氏はプロダクションマネージャーとしてこの事業に関与している。

当初「ジャパンデイプロジェクト」は「経済産業省の支援を受ける事業」として発表され、異動間際だった経済産業省のメディアコネンツ課課長もイベントに招かれカンヌに出張していた。また、映像産業振興機構の事務局長の市井三衛氏も「カンヌのイベントにおいては経産省から1億200万円の補助金支給を予定している」「イベントの予算は第三者委員会の承認を得ている」と文書で回答していた。

しかし、後にカンヌイベントが不適切だとの批判や複数の週刊誌らの追求が始まると、運営は公式ホームページから「経産省支援事業」や文言や、コンソーシアムの企業名を削除するなど隠蔽工作を行っていた。その後、発表していたイベントもジャパンエキスポをもって途中で中止となった。

経済産業省に対し行った情報公開請求で経済産業省は「ジャパンデイプロジェクト」は「経産省支援事業ではない」と発表されていた事実を否定し、さらに、当該事業は映像産業振興機構が基金管理を行うJ-LOP事業であるため公文書の作成も保存もしていないとの理由で不開示決定を下した。

しかし、この経済産業省の説明はJ-LOPの運用に規定や事実に照らし合わせると全く整合性がない。

まず、J-LOPの補助金を受ける補助事業者は、補助金の透明性を図るために社名と事業内容を公表することになっている。しかし、「ジャパンデイプロジェクト」においてはそれらの公表はされていない。

さらに、補助事業者は補助事業の刊行物にJ-LOPの補助金を受けたことを示すクレジット表記が義務付けられているが、「ジャパンデイプロジェクト」にはそれらの表記も一切存在していない。そればかりか、J-LOPは経産省と総務省の共同基金であり「経産省、総務省支援事業」と表記されるべきものが、明確に「経産省支援事業」となっている。

これについては総務省にも情報公開請求を行い確認したが、総務省は「ジャパンデイプロジェクト」は一切知らないし、関知していないと回答し、不開示決定を下している。

さらに、全部で5イベントの計画のあった事業を途中で中止にしたり、間接補助事業者であるコンソーシアムの再編成を行っているとの理由で事業者名を削除していたにも関わらず、経済産業省には当該事業に係る変更届などの公文書は一切存在していないことになっている。

映像産業振興機構の「平成27年度事業計画(案)」によると「ジャパンデイプロジェクト」は「自主事業」になっており、その予算も「平成27年度特定非営利活動に係る事業会計収支予算(案)」ではわずか1332万4000円となっていて、この部分においても経済産業省の説明には整合性がない。

経済産業省は「1円たりとも税金の無駄のないことは公文書ではなく映像産業振興機構に出向き、目視で確認しているが、詳細はいちいち覚えていない」と「ジャパンデイプロジェクト」の税金の出処について説明をしてこなかったが、平成29年6月22日付の情報公開・個人情報保護審査会の答申(平成29年度(行情)答申第102号)において、今度は、J-LOP事業の「基金管理費」の中の「広報費」を活用し、「ジャパンデイプロジェクトコンソーシアム」に事業委託をしたものであるとの新たな事実認定がなされた。

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(パリのジャパンエキスポに使用された「ジャパンデイプロジェクト」のラッピングバス、事業はこの後に中止)

映像産業振興機構の基金管理費とは?

「経産省支援事業」として実施されたものが、批判が高まると「第三者委員会を通したJ-LOP事業」になるなど映像産業振興機構と経済産業省の説明は二転三転したが、ここに来て2年以上の審査を経てこの事業の税金の出処が「基金管理費」であるとなったわけであるが、この「基金管理費」こそ行政が目的を問わず自由自在に支払い請求に応じる裏金になっている。

経産省の公文書によると、J-LOP事業155億円のうち、28億2491万円が映像産業振興機構が受け取る「基金管理費」予算となっており、そのうち「20億2900万円」が「広報費」として予算が組まれていた。

よって、この「広報費」20億円2900万円から「ジャパンデイプロジェクト」が執行されたということになる。

しかし、この「広報費を活用」の説明もまた事実との整合性が取れていない。

映像産業振興機構は、経済産業省に対し補助金の支払いを請求する際、毎月「予算実績管理表」という明細を提出している。しかし、この「実績管理表」によると、カンヌ映画祭イベントが行われた2015年5月の「広報費」の支払い請求は0円となっている。

経済産業省は「請求月」の文書とと事業終了後の「処理月」の会計文書には差異があると説明しているが、事業終了後に提出された「基金の出入金がわかる文書」においても、2015年5月の「広報費」は0円となっている。

つまり、支払い請求月の文書、支払い終了後の会計文書においても、カンヌ映画祭イベントが「事務管理費」の「広報費」から賄われた事実は存在していない。

そもそも「ジャパンデイプロジェクト」の事業主体が映像産業振興機構であるのに、自分で自分が主体となるコンソーシアムに補助金を流用することを「事業委託」であるという説明も合理性に欠ける説明である。

また、本来、補助事業の広報とはホームページで補助金の説明を行う程度のものであり、実際に、映像産業振興機構が次に受託した「J-LOP+」事業の「広報費」予算は200万円である。

J−LOPとJ−LOP+では実施期間の違いはあれど、本質は海外展開支援と同じ事業であり、ある時は200万円程度の広報に対し、別の時は20億円の予算が通るという点も常識的には考えられない。

また、このような法外な「広報費」の予算を提示する法人が短期間の公募で当該海外プロモーション事業を4連続で落札できる制度も極めて疑わしい。なお、映像産業振興機構はこの「広報費」の取引先については情報公開を行わないと回答し、HPに掲載している業務報告、会計報告においてもこれらを明らかにしていない。

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cannes-2017_web補助金適正化法無視、役所がNo Questions Askedで決済する裏金20億円

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律

(補助金等の交付の申請)

第五条  補助金等の交付の申請(契約の申込を含む。以下同じ。)をしようとする者は、政令で定めるところにより、補助事業等の目的及び内容、補助事業等に要する経費その他必要な事項を記載した申請書に各省各庁の長が定める書類を添え、各省各庁の長に対しその定める時期までに提出しなければならない。

(補助金等の交付の条件)

第七条  各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をする場合において、法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要があるときは、次に掲げる事項につき条件を附するものとする。

一  補助事業等に要する経費の配分の変更(各省各庁の長の定める軽微な変更を除く。)をする場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと

補助金適正化法には上記の条文等が定められているが、「ジャパンデイプロジェクト」においてはその目的、内容、経費等の文書は経産省に存在しないことになっている。さらに、5つイベントを途中で中止しするなど大幅な予算配分の変更が発生しても、経済産業省大臣からの承認を必要としていない。

いつ、何の目的で請求しようが、途中でいかなる変更を行おうが、癒着する広告代理店らとともに自らが事業主体となる事業を「事業委託」と称していようが、監督官庁は何も問うことをせず「広報費」の20億円を承認している。

さらに2015年5月だけでなく、この「広報費」にはさらに不可解な支払い実績も存在する。

支払い請求時に提出された「予算実績管理表」によると、映像産業振興機構はJ-LOP事業終了となる2015年12月の前後に合わせて約8億5000万円もの「運営費」「広報費」の支払い請求を行っている。しかし、事業終了後の会計報告時の「基金の出入金がわかる文書」においては、全て「広報費」として処理されている。

こうした承認された予算の「運営費」と「広報費」の分配を6億数千円単位で変更する支払い請求を行い、実際に補助金の支払いを受けているにもかかわらず、法律に定められた変更届の申請や、これにかかる経済産業大臣の承認に関する公文書は存在しないこと経産省は情報開示決定を行っている。

J-LOP事業の最終年となる3年目、しかもその事業終了直前に引き出された8億5000万円もの「広報費」とは何だったのか?映像産業振興機構に問い合わせるも未だに回答はない。

このように使途も、目的も問われずに使用出来る税金は、法令に定められた「適正」という言葉からあまりにもかけ離れている。

平成27年年度映像産業振興機構への補助金に関する全ての文書

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J−LOP事業費の規定

  • 支給額:最大経費の50%まで
  • 事業者および事業内容の公表
  • J-LOPもしくは経産省&総務省支援のクレジット表記
  • 事業成果報告書の提出

J-LOP事務管理費

  • 支給額:自主事業、利益相反事業に流用が可能
  • 事業者非公開が可能
  • クレジット表記なしが可能
  • 3行の自社報告書が可能
  • 事業変更、中止届け不要

裏金を情報不開示でブラックボックス化

こうした事実が歪められ、税金の出処も極めて不可解な事業が発生しているにも関わらず、経済産業省は頑なに情報開示を拒否する決定を下し、その理由を「映像産業振興機構の権利、競争上の地位、その他正当な利害を害すると認められる」と説明している。

法外な事務管理費から出向する広告代理店と一緒に不適切なイベントをカンヌ映画祭の国の窓口で行う。自分で自分に億単位の税金を「事業委託する」という業務形態には、保護法益とされる「健全な競争」は存在していない。そもそもこの事業においては、税金の使途も出処も説明に整合性がない。こうした不透明な事業を行った場合でも、「支援事業」の監督官庁が情報を隠せば、裏金をブラックボックス化できる制度になっている。

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非民主的行政と経済産業省の嘘

経団連が設置提言した法人が、経団連が予算要望する合計342億円もの事業を4連続で受託する。また、そこには同法人で理事務める経団連幹部に近い広告代理店社員が出向し、自分で自分たちに億単位の税金を自由自在に「事業委託」できる「広報費」が組み込まれた制度がある。これこそが、クールジャパン政策に潜む裏金20億円の仕組みである。

異動間際の経済産業省担当課の課長がカンヌに出張する「経産省支援事業」との発表が、週刊誌に突かれると変更され、問い合わせに対して辻褄の合わない嘘を回答、さらには情報公開制度まで歪める姿勢は極めて非民主的行政であると言えよう。

本来、日本のクリエイティブ産業支援においては「映画様だ、アニメ様だ、我々は支援されて当然だ」というわけにはいかない。国民の財産の使われ方には国民の理解が大前提で、この産業が日本を豊かにするために有効だということを誠実に示さないといけない。

今ある産業支援の形は、この20億円の裏金を見ても、広い国民理解はおろか産業従事者からすらも支持されないあまりにもひどい既得権益支援と無駄遣いに終始されている。

本来クリエイティブ産業が向き合わなければならない議論は「映画なんかより医療に税金を使え、教育に使え」などに対する誠実な説明と成果である。広告代理店と癒着し342億円を執行などやれば、国民理解などいつまでたっても得られるわけがない。だからこそより一層の厳しい批判は必要である。

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