クールジャパン・コンテンツ海外展開補助金282億円の闇:映像産業振興機構による基金管理事務費不正請求と年度報告書の改ざんによる8億5000万円公金詐取疑惑

「1円たりとも税金の無駄がないことを確認しています」経済産業省

この国では巨額予算がつくとそれがすぐ税金の無駄の温床になる。今、政官民で熱に侵されているクールジャパン政策もその一つである。これまでクールジャパン・コンテンツ海外展開促進事業には282億円もの税金の交付が決定している。この補助金に関して経済産業省メディアコンテンツ課の今村氏は次のように説明した。「経済産業省は1円たりとも不適切、無駄な税金がないことを確認しています」しかし、この言葉とは裏腹に経産省への情報公開により基金設置法人による架空の管理事務費請求、年度会計報告書改ざんが判明し、経済産業大臣の承認のもと少なくとも8億5000万円もの税金が不正に支払われている疑惑が発覚した。

経済産業省の開示文書:(PDF)

平成27年度映像産業振興機構への補助金に関するすべての文書

クールジャパン助成金管理事業は40億円のビッグビジネスblog_2

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クールジャパン関連のコンテンツ海外展開促進事業(J-LOP、J-LOP+、JLOP)には、これまで平成24年補正(経産省123億円、総務省32億円)、26年補正(経産省60億円)、27年補正(経産省67億円)と総額282億円が交付決定されている。そして、その巨額基金管理事業の全てを制度設立時に経産省が概算請求の資料に受託想定先と記載した特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)がその通りに受託している。なお、27年度補正予算時公募数は2件である。また、この補正予算に関し政府に予算提言を行った経団連コンテンツ部会の部会長依田巽氏は映像産業振興機構の幹事理事を務めている。

28年第2次補正においても60億円の予算がつき、これも映像産業振興機構が受託している(J-LOP4)(*2017年1月4日加筆)

このクールジャパン補助金基金設置法人には総事業予算の中から平成24年補正予算J−LOPで28億2491万円、平成26年補正予算J-LOP+で3億円、平成27年補正予算JLOPで7億9000万円が割り当てられている。つまり「クールジャパン」を運営すること自体が公的映像系法人にとって格好のビッグビジネスになっている。

映像産業振興機構においては間接補助事業者に当たる広告代理店株式会社クオラスの社員が出向(*経産省メディアコンテンツ課はのちに出向ではなく業務提携であったと説明を変更)するなどの癒着や、利益相反で管理する補助金に手をつけ運営したジャパンデイプロジェクトなど、不適切な基金管理実態もこれまで確認されている。

(関連記事:クールジャパンが生む不透明なカンヌ映画祭事業への補助金1億円と経済産業省の隠蔽体質クールジャパン補正予算に巣食う映像産業振興機構とジャパンデイプロジェクトにある経済産業省の嘘

異例に跳ね上がる平成27年度映像産業振興機構の補助金収入19億円

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経産省の開示文書によると、平成27年度映像産業振興機構はJ-LOPとJ-LOP+の二つの基金管理を行っている。また、映像産業振興機構の平成27年度事業会計収支計算書では、収入の部にある受取補助金が19億353万円と異例に跳ね上がっているのがわかる。この額はJ−LOPの受託が始まった平成25年度が2億1357万円、平成26年度が4億8532万円、JーLOP以前の平成24年度に至っては358万円であることからも、いかにこの補助金収入が異例であるかがわかる。

この19億円の補助金収入の内訳について映像産業振興機構に問い合わせたところ、同機構は「ホームページ上で公開している資料に記載していない情報は開示しない」と回答を拒否した。しかし、経産省の情報開示文書により、当該機構の補助金収入はこのクールジャパン基金管理事務費による収入であることがわかった。

経済産業省から映像産業振興機構への管理事務費支払いのプロセス

経済産業省から映像産業振興機構への基金設置法人事務費用の支払いはまず映像産業振興機構が経済産業大臣あてに当該月の概算払いを基金実績管理表とともに申請し、それを経済産業省メディアコンテンツ課が内容を精査し、問題がないと確認した上で、同メディアコンテンツ課と同会計課が決裁し経産大臣へ承認の伺いを立て、経産大臣が承認し、支払われる仕組みになっている。

申請プロセス1:映像産業振興機構による申請

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申請プロセス2:経産省の精査、決裁、経産大臣への承認の伺い

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申請プロセス3:経産大臣承認

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不正請求の手口、補助事業終了に合わせ8億5000万円の運営費、広報費を架空請求

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上記で述べたように、平成24年補正のJ-LOP予算の場合、総予算155億円のうち126億9509万円が間接補助事業者への助成金(経産省への支払いには「事業費」と記載)であり、残りの28億2491万円が映像産業振興機構の「基金管理事務費用」になっている。しかし、あくまでもこのクールジャパン補助事業は民間事業者の海外展開支援であることから、助成金(「事業費」)の採択金額が上限に達した時点で事業終了を迎える。

経産省メディアコンテンツ課課長補佐の山室氏(当時)によると、少なくとも2015年7月末時点で採択件数が助成金予算の上限に達しており、同12月には補助事業が終了することが確定していた。実際にこの説明の通り12月をもって助成金を使い切り、事業は終了している。

不可解なのは7月末時点で事業終了が確定した後、映像産業振興機構が事業最終月となる2015年12月前後に億単位の運営費、広報費を申請し、経産省がそれを承認し、支払っている点である。例えば、2015年11月には1億9864万円、同12月には4億415万円もの「運営費」が、そして2016年1月には2億4654万円、また3月には368万円の「広報費」が支払らわれている。ちなみに前年度の管理業務にかかった総運営費は2286万円で、総広報費は1億6778万円である。これらの3ヶ月に集中した不透明な支払いの総額は8億5000万円に上り、この金額は2014年年度の1年間の総基金管理費用の倍以上に及ぶ。

%e4%ba%8b%e5%8b%99%e8%b2%bb%e6%8e%a8%e7%a7%bb事業終了直前の2ヶ月に6億5000万円もの運営費をかけた何を実施したというのか?そして、そもそも補助事業後の新規申請の必要ない制度の「広報」に2億4644万円もの支払いを請求する理由はどこにあったのか?

映像産業振興機構ホームページを見ても2015年11月、12月当時に総額6億円の運営費に該当するような催しは確認できない。また、公開文書の中に平成26年補正J-LOP+広報費の内訳と実績が記載された文書も存在するが、広報費の内訳はJ-LOPウェブサイト、メールマガジン、助成金の冊子となっており、かかった経費実績も200万円で済んでいる。このことからも事業終了後の2016年1月にこの120倍もの「広報費」が必要だとする正当な理由は見当たらない。このことからも、これらの8億5000万円の申請は、予算を消化するために請求された「運営費」「広報費」を架空請求であることは容易に想像できる。

なお「広報費」に関しては、2015年4月にも3億7381万円もの巨額広告費の支払いがなされていて、業務実態に照らし合わせてみてもその支払いには大きな疑念が残る。さらに平成27年補正予算事業で受託したJLOPの予算計画書には4億4640万円の「広報費」が計上されている。

映像産業振興機構へ事業終了間際及び事後の高額な運営費、広報費請求についての説明を求めているが、現在まで回答は届いていない。

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8億5000万円架空請求の帳尻合わせに年度報告書を改ざん

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%e7%b7%8f%e4%ba%8b%e6%a5%ad%e8%b2%bb%e6%af%94%e8%bc%83映像産業振興機構の8億5000万円もの請求が不正な架空請求であったことの裏付けは事業終了後の2016年4月8日に提出された「年度報告書」の改ざんにも表れている。2016年3月11日提出の実績表は概算支払いであり、「年度報告書」との間で多少の差額が発生することは理解できる。しかしここでいう改ざんとは言葉にならないほど酷いものである。

そもそも当該期間に6億円の「運営費」を費やした痕跡がないのは当然で、2015年11月に「運営費」として承認、支払いを受けた1億9864万6898円は、年度報告書においては僅か240万2396円と記載されている。また同12月の4億415万643円は307万8000円に改ざんされている。さらに、申請時実績表で0円であった11月、12月の広報費の出入金記録が、11月は2億円、12月においては6億4521万4247円の入金に書き換わっていた。さらに「広報費」においては、2016年1月の支払いにあった2億4654万4000円、同3月の368万円は「年度報告書」にいてはその支払いも0円と記載されている。つまり、事業終了後に「広報費」として支払い請求を行い、補助金を受給事実が完全に消された会計報告書になっている。

なお、年度報告書においては、支払いとの差額が発生して場合、別紙にて報告、清算することになっているが、この件に関する報告は一切記載されていない。また「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」第7条一には経費配分の変更には軽微なものを除き省各庁の長の承認をえることが定められている。しかし「J-LOP実績表」に記載されている「運営費予算」は当初6275万円となっているにもかかわらず、何の承認もないまま2ヶ月間に決して軽微とはいえない10倍に当たる6億円を請求し、支払われているという異様な経費配分の変更が発生している。もちろん、公文書には一切の記録はなく、自由自在に補助金を請求できる仕組みになっている。

では、経済産業大臣が判子を押し、承認した管理事業費が、事業終了後にエクセルシートの数字をいじるだけでこうも簡単に改ざんされるところに本当に「1円たりとも税金の無駄」はないのであろうか?

おそらく映像産業振興機構は、当初の予算枠を超えた「運営費」名目の支払い、補助事業終了後に求めた「広報費」支払いの問題を悟り、あたかも適切に予算を消化したかを装うために「広報費」に割り当てるなどの改ざんを行ったものだと思われる。しかし、たとえ仮に「これは改ざんではなく誤記である」と主張したとしても、7月時点で終了が確定していた事業の最終2ヶ月に8億4521万4247円もの広報費の支払いを受けた事実に正当性を見出すことは到底できない。

なお「年度報告書」を見ると2016年3月に監査料を支払っている。そして現時点で決済をした経済産業省は「一円たりとも無駄な税金がないことを確認している」と説明している。このことからも8億5000万円の「広報費」「運営費」は問題なく監査を通ったものだと推測できる。となればこの監査そのものも経産省の”精査”同様、極めて怪しいものである。

支払い申請時の実績表

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事業終了後の年度報告書の実績表

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支払い差額報告書

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なぜクールジャパンの無駄はなくならないのか?

上の写真は2015年5月にカンヌ映画祭で行われたジャパンデイプロジェクトの写真である。そして映像産業振興機構の理事たちと写る左の女性はこのイベント直後に異動している経済産業産業省メディアコンテンツ課の柏原恭子課長(当時)である。ジャパンデイプロジェクトとは、映像産業振興機構、株式会社クオラス、株式会社アサツーDKがJ-LOP助成金で運営した事業であり、カンヌ映画祭イベントだけで1億200万円が承認されている。このイベントには経産省からは柏原課長と板橋氏が出張しているが、彼らは映像産業振興の管理事業費を含む事業費申請を精査、決裁する立場にある職員である。この出張目的はこのイベントの他に、諸外国との意見交換とあるが、出張報告書に記載のある面会者3人は映像産業振興が手配した人物である。つまり経産省のカンヌ出張は映像産業振興機構によってつくられた出張と言える。

利益相反1-01

このような利益相反関係の中で巨額税金を放り込めば、基金設置法人が事業終了後に説明のつかない法外な「広報費」が申請されても、監督官庁は何の疑問を持たず、決裁、承認するのかもしれない。また事業報告に明らかな改ざんが行われていても「詳細の情報は把握していないし、情報開示する公文書は存在しない」と情報公開を拒否した上で、「映像産業振興機構へ出向き資料を目視で確認し1円たりとも税金の無駄はないことを確認しています」と言ってのけるのかもしれない。クールジャパンには常に税金を使う側「我々」に都合のいい制度が存在する。

一方、日本のクリエイティブ産業には困っている人がいる。政府はアニメ産業の劣悪労働環境に関するレポートをまとめ、聞き取り調査を実施、映画産業で言えば製作費60億円(当時のレート)のロケ誘致案件が他国に流れている。日本がクリエイティブ産業で食べていくということは、日本に投資を獲得し、また産業を支える現場に質のいい産業雇用創出することが重要である。ソフトパワーによるインバウンド効果を得たいなら、まずこの国でインバウンド効果を生むいいコンテンツが生まれる環境がなければそもそも達成できない。これは何百億円の税金を使いながら、極めて客観性に乏しい3行の政府報告書で「日本ブーム創出に貢献」「観光促進に寄与した」「クールジャパン大成功」と書いただけでは決して解決しない問題である。政府会議室の主観的な内部評価を基準に「クールジャパン万歳」とひたすら念仏を唱えても、クリエイティブ産業が向き合う真の国際競争の中では全く機能しない。日本を豊かにするために本当に必要な施策において、問題意識のない人間が公金を扱うこと、ましてや国民を蔑ろにし不正利得を得る行為、次世代のためにもこれらをこれ以上許してはならない。

追記:

決済をした経済産業省大臣官房会計課にこの問題について問い合わせたところ「この問題は上の者にも報告し、現在精査中です」との回答を得ている。

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