日本を元気にするコンテンツ総合戦略60億円の負の遺産:ALL NIPPON ENERTAIMENT WORKS4年間の杜撰な経営実態と公的資金投資評価

設立から4年、投資決定時の将来見通しは破綻

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「日本を元気にするコンテンツ総合戦略」として経済産業省が企画し、2011年に産業革新機構が設立した株式会社ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS(ANEW)には、4年以上が経つ今も映画は1本も存在していない。そして投資決定時にあった「設立3年で継続的な利益を生む」という将来見通しは乖離どころか、もはや破綻状態にある。

国民財産の投資を適切に行うための担保となる法律、第三者機関の公平性、独立性は形骸化し、関係者が利益相反で行っている公的資金運用のルールを無視した経営体制は、天下り監督官庁の経済産業省によって「適切な投資」と承認されている。これは起こるべくして起きている公的資金60億円の毀損であり、クールジャパン政策における国レベルの腐敗を映し出している。

 

2012_ANEW_2(2012年知的財産推進計画より)

映画成立0本でも膨らむ赤字14億円

第1期(自2011年10月27日 至12月31日)

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経営

代表取締役 高橋真一(産業革新機構マネージングディレクター)

社外取締役 長田志織(産業革新機構)

監査役 関根武 (産業革新機 構執行役員)

資本金3億円、利益余剰金-1250万円、当期純損失-1250万円

設立経緯

2010年

経済産業省企画

産業革新機構プロジェクトチームANEW設立検討(高橋真一、長田志織ら)

経済産業省「2010年産業構造ビジョン」

2011年8月15日 会社設立発表

2011年10月27日 会社成立

政府による推進

12月5日 第2回コンテンツ強化専門調査会

第2期(自2012年1月1日 至12月31日)

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経営体制

代表取締役   高橋真一(産業革新機構)

代表取締役CEO サンフォード・アール・クライマン(3月30日~)

代表取締役COO  黒川祐介(3月30日~11月22日辞任)

社外取締役   長田志織(産業革新機構)

社外監査役    関根武 (産業革新機 構執行役員)

資本金

資本金3億円、利益余剰金-2億5344万、当期純損失-2億5344万

出資者

産業革機構

企画発表

『ガイキング』発表(12月19日発表)

その他

アメリカンフィルムマーケット参加

政府による推進

知的財産推進計画2012

経済産業省:コンテンツ海外展開の施策について

クールジャパン会議

5月15日 首相官邸 第十回コンテンツ強化専門調査会

主な発言(発言者:黒川祐介COO、伊吹英明メディアコンテンツ課長)

⚫︎日本側が映画製作成立(グリーンライト)までのスピードをコントロール

⚫︎投資委員会によるフェアな投資

⚫︎日本ではANEWを通さなければIPの海外展開の仕事ができない

⚫︎新しいビジネスモデルに十分な可能性、3年で利益を示す

5月16日 経済産業省第11回クールジャパン官民有識者会議

主な発言(発言者:伊吹英明メディアコンテンツ課長)

⚫︎映画企画開発、配給における継続的なルートを作っていく活動

第3期(自2013年1月1日 至12月31日)

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経営体制

代表取締役CEO サンフォード・アール・クライマン

代表取締役 高橋真一(産業革新機構)

社外取締役 長田志織(産業革新機構)(10月15日辞任)

社外取締役  大皷宏宣(産業革新機構)(10月15日就任)

社外監査役 関根武 (産業革新機 構執行役員)

CEO、COO補佐 渡邊佳奈子(経済産業省)

*経産省職員がいつからいつまで在籍していたかは不明

*長田志織氏はその後産業革新機構出資の株式会社ゼファー代表取締役副社長就任

資本金

資本金5億5250万円、利益余剰金-5億6845万円、当期純損失-3億1500万円

出資者

産業革新機構 5億5000万円 (12月19日変更)

第1回新株予約権割当 250万円(11月20日変更)

企画発表

新規企画なし

その他

トロント映画祭フィルムマーケット参加

政府による推進

4月17日 首相官邸 第4回コンテンツ強化調査会

主な発言(発言者:伊吹英明メディアコンテンツ課長)

⚫︎あと2年で興行収入からの配当を得る

5月24日 衆議院 第183回国会経済産業委員会14号

主な発言 (発言者:中山亨 経済産業大臣官房審議官)

⚫︎『ガイキング』は撮影準備の段階に来ている

12月12日 第5回内閣府知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会

主な発言(発言者:野口祐子委員/グーグル法務部長/弁護士)

⚫︎ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKSは結果的どうなったのか?

*伊吹英明メディアコンテンツ課長出席。

第4期 (自2014年1月1日 至12月31日)

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経営体制

代表取締役CEO サンフォード・アール・クライマン

代表取締役COO 清水久裕

取締役 高橋真一(産業革新機構)

社外取締役 大皷宏宣(産業革新機構)

社外監査役 関根武 (産業革新機構 執行役員)

会計監査人 新日本有限責任監査法人(3月31日設置)

資本金

資本金11億1500万円、利益余剰金-10億0161万円、当期純損失-4億3316万円

出資者

産業革新機構 11億1000万円(11月28日変更)

第1回新株予約権割当 250万円

STORIES合同会社 250万円 (11月19日資本提携)

企画開発発表

7月31日:『ソウルリヴァイバー』

10月31日:『オトシモノ』

12月10日:『臍帯』

政府推進

1月 コンテンツ産業の現状と今後の発展の⽅向性

第5期(自2015年1月1日ー12月31日)

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資本金

資本金11億1500万円、利益余剰金-4億3105万円(資本準備金から10億円処理)、当期純損失-4億3105万円

出資者

産業革新機構 11億1000万円

第1回新株予約権購入者 250万円

STORIES合同会社 250万円

経営体制

代表取締役CEO サンフォード・アールクライマン

代表取締役COO 清水久裕(*2016年9月30日退任)

取締役 高橋真一(産業革新機構)

社外取締役 大皷宏宣(産業革新機構)

社外監査役 関根武 (産業革新機構)

会計監査人 新日本有限責任監査法人(3月31日設置)

企画発表

7月22日『6000』

8月26日『藁の盾』

10月10日『Tiger&Bunny』

 不可解な巨額損失計上の検証

これらの決算公告を踏まえ、改めて将来見通しと4年間の経営実態と時系列に検証すると不可解な損失計上に突き当たる。

第2期の純損失は-2億5344万円、第3期は-3億1500円になっている。この時点の利益余剰金-5億6845万円だが、この期間にに発表された企画は『ガイキング』のみである。

仮に『ガイキング』の権利元の東映アニメーションに映画化権料を支払い、高額なハリウッドの脚本家を雇ったとしても、この損失は映画企画開発コストとしては常軌を逸した額である。

そもそも東映アニメーションは製作に携わる権利者であることから、ANEWが東映アニメーションに原作料を支払う、もしくは通常映画化権料の10%程度のオプションを支払い独占的な企画開発権を押さえておく必要もない。

ではどんな支出がこの巨額の損失を生んだのか?

これらは虎ノ門とロサンゼルスオフィスの家賃、アメリカンフィルムマーケット参加の翌月に辞任したCOO、トロント映画祭や日本の東映アニメフェアなど海外出張する経験のないアメリカ支社幹部、打ち合わせと称した高級レストランでの接待、産業革新機構が自分たちで決める役員報酬、経済産業省天下り職員にでも費やしたというのか?

そしてこれらを何の見通しも立っていない「革新的映画ビジネス」とやらのどこで回収し、莫大な国富を日本の映画産業に還流し日本再生につなげるというのか?

ちなみにANEWの会計監査人は代表取締役、社外取締役と同じ産業革新機構の執行役員と、何ら中立性のない利益相反の経営監視、牽制体制の仕組みとなっている。

ANEWは2014年3月31日に監査法人設置法人となっている。そして会計監査人に就任したのが、東芝の粉飾決済で金融庁から不当な運営が認められ業務停止処分を受けた新日本有限責任監査法人となっている。*

履歴条項全部証明書

不可解な11億円増資の検証

ANEWの支援決定時の支援基準にあった全ての将来見通しが完全に破綻しているに関わらず、産業革新機構は2014年11月28日に11億2000万円(資本金5億6000万円、資本準備金5億6000万円)の増資を行っている。

一体どういった投資評価や審査を経て、将来見通しをこれぼどまで乖離した虚業に巨額増資を行ったのか?

この年、産業革新機構はジャパンディスプレイを新規株式上場させ巨額の利益を得ている。株を売りのけ大儲けしたお金をANEWに分配でもしたというのか?

決算公告を見るとの資本金5億5000万円の巨額追加資金も、第4期末にはほぼ底をついている。

この期間に経済産業省幹部は首相官邸及び国会にて「3年で興行収入を得る」「撮影準備中の段階に来ている」との経営報告を行い、この経営説明後に増資を行ったことになる。

実際には一定期間に興行収入を見込む映画製作や配給の契約や撮影準備の事実が存在していないことから、経済産業省は虚偽の経営実態を報告をしていたことになる。

一般なら虚偽の経営報告に基づいて投資が行われていたとすればこれは犯罪に当たる。これを出資者「国」が利益相反で投資先企業に天下り、公的資金を引き出す行為に及んだ場合は「成長戦略」だとして許されるのか?

またANEWには資本比率にして0.002%に当たる250万円の民間出資が2度記録されている。

ANEWは2013年12月19日に新株予約権を割り当てている。この民間出資後ANEWは産業革新機構の100%出資のステータスから除外され、産業革新機構の事業報告の主な子会社から削除された。

2014年11月19日には博報堂DYホールディングスが設立したSTORIES合同会社との資本提携を行っている。資本金11億1000万円、加え同額の資本準備金のあるANEWに250万円の資本提携が必要だったのかは甚だ疑問である。仮にこの年にアメリカ法人を設立したSTORIES合同会社がANEWのコンサルティングサービス、ノウハウ、IPを使用したいのであれば、本来は対価を支払うべきものであり、出資という扱いにはならないはずである。

出資者「国」でもチェック機能ゼロ、経済産業省の怠慢と官民ファンドの運用ガイドライン違反

産業革新機構を含む官民ファンドには官民ファンド運用に係るガイドラインが定められている。しかし「政策実現のための一時的お手伝い」と称し監督官庁で天下りをする経済産業省は、日本の成長のための健全な投資を行う監視、牽制の役割と、情報公開による国民への説明責任を完全にネグレクトしている。

官民ファンド運用に係るガイドライン:監督官庁及び出資者たる国と各ファンドとの関係 

① 監督官庁及び出資者としての国と、投資方針の政策目的との合致、政策目的の達成状況、競争に与える影響の最小限化等について、必要に応じ国からの役職員の出向を可能とする措置を講じるなど、密接に意見交換を常時行うための態勢を構築しているか。

② 投資決定時における適切な開示に加え、投資実行後においても、当該投資について適切な評価、情報開示を継続的に行い、国民に対しての説明責任を果たしているか。

③ 監督官庁であり出資者である国が、政策目的の実現及び出資の毀損の回避の観点から、各ファンドによる投資内容及び投資実行後の状況等について適時適切に把握するため、各ファンドは次の事項について、監督官庁及び出資者それぞれに、適時適切に報告しているか。

・投資内容(投資先企業名、事業内容、投資額等)

、投資決定のプロセスや背景等

・投資実行後における、適切な評価に基づく、各投資先企業についての財務情報、回収見込み額、出資に係る退出(EXIT)方針、投資決定時等における将来見通しからの乖離等

④ 守秘義務契約により上記の運用報告が妨げられる場合において、当該守秘義務契約の存在及びその理由について事前の説明も含め適切に報告しているか。

ここに経済産業省が作成した2012年「コンテンツ海外展開の施策について」と2014年「コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性」がある。

この期間にはANEWの致命的な欠陥がすでに露呈しているにも関わらず、同じ資料を使い回すだけで適切な評価を行っていない。また、2014年の資料において産業革新機構は100%出資者となっているが、この時点のANEWには新株予約権割当てられ、既に100%出資はではない。

こうした事実も把握することなく、毎年それらしい「コンテンツ産業の未来」の資料作りで仕事を終えている。

(左:2014年資料 右:2012年資料)

さらにガイドラインよれば、政策実現目的と出資の毀損を防ぐために、”投資実行後”においても各投資先についての財務情報、回収見込み額、投資決定時における将来見通しの乖離を検証、評価することが定められている。

しかし、経済産業省に対して情報公開請求を行ったところ、財務情報については所有も保管もしていないとの理由で不開示決定にした。すなわち出資者「国」は一切の財務情報を把握せず法律で定められた産業革新機構の事業評価を行っていることになる。

これに対し財務省は「通常事業評価を行う場合、監督官庁が財務情報を保有していないことはありえない」とも説明している。また情報公開を拒否することは国民に対する説明責任の規定をも蔑ろにしている。

結局、この国では天下り監督官庁による杜撰な評価が、巨額公的資金の運用の健全性の担保として正当化されている。しかし、ANEWへの運用実態が示す通り、官民ファンドの運用ガイドラインな形式的な紙切れに過ぎない。それどころか出資者「国」こそがANEWに蕩尽される国民財産60億円の片棒を積極的に担いでいる。

経済産業省情報公開決定

産業革新機構から金を引き出すための合言葉「イノベーション」を叫べ

この国に蔓延るクールジャパン熱に侵された天下り脳による「イノベーション」の乱用は重症である。企画立案の経済産業省が偽りの政策と「官民一体」を掲げれば、あとはどうやって「イノベーション」に関連付けた国民だまし公的資金横流し実現の既成事実が積み上げられていくことになる。

ここにこれまで語られてきた数々の空虚な「イノベーション」が存在する。

  • ニッポンのイノベーションのために
  • グローバルモデルによるイノベーションによりニッポンのエンタテインメントが生まれ変わる(ANEW理念)
  • オープンイノベーションの実現を行い、海外で稼ぐコンテンツ産業の新しいビジネスを確立するものであり、革新性がある(経済産業大臣)
  • サンフォード・アール・クライマンはエンタテイメント、メディア産業における革新的ディールメイカー(経済産業省)

グローバルモデルのイノベーションの映画製作とは一体どういうビジネスモデルなのか?革新的な契約交渉とは何なのか?

  • 日本が世界市場で稼げるようになるオープンイノベーションの実行とは?
  • 契約交渉のイノベーションとは?
  • ”ニッポンのイノベーション”はどのように映画プロデュース、撮影、マーケティグにおけるビジネス面、創作面の効率性向上を生むのか?
  • 具体的にはどのような経営を行いハリウッドのスタジオのような継続的な製作体制を実現するのか?

簡単な質問にすら答えられない”ニッポンのイノベーション”、「世界で賞賛される凄い日本IPが海外展開と叫べば世界的な産業イノベーションが起こる」「CEOが革新的な契約交渉人」、こんなものは物語作り、映画製作、マーケティング困難が改善する「革新」ではないばかりか、映画ビジネスの根拠ですらない。

なぜその物語を伝えるのか?

いつ、そしてどのように継続的に資金調達を行うのか?

その物語を伝えるための核になる創造性、携わる映画人材のクラフトマンシップをどう確保していくのか?

どうやって正しいマーケティングして映画を世界の観客につなげ、どのようにして投資回収するのか?

こうした具体性を一切語らなくとも、この国では、英文の契約書を読めない日本人を支援、アメリカ人が交渉するという、国際競争において実に幼稚な事業内容に「イノベーション」の言葉だけ関連付けさえあれば政府の政策適合する評価を受ける。そして何お根拠もない「ハリウッド映画作り」に一定期間内での高い回収見込み、「産業”革新”機構」の支援基準を満たす「官民一体」の虚業が作られる。

例え政府会の議室内だけでしか通用しない”イノベーション”を現実世界に出したとしても、結果は14億円もの赤字を拡大させているだけで、未だ映画が作られる見込みすらない。

現在この手法は500億円のクールジャパン機構、215億円のJ-LOPにおける「公金確保にクールを叫べ」にも応用されている。

革新的映画企画開発の日常業務とは?

ANEWの革新的業務内容を記したアメリカ法人のインターン募集広告がある。

業務内容:

  • 海外展開の日本IPの査定
  • 日本の原作および原作者についてのリサーチ
  • あらすじおよびキャラクター紹介文の執筆
  • プレゼンテーション資料制作

「アメリカ人が無知な日本人の代わりに英語資料の資料を作り、交渉します」に60億円投資の価値が認められる社会的意義など存在しない。この程度の弁護士や代理人サービスなら日本企業が個別に受けることできる。

世の中には素晴らしいフィルムメイカーたちが立案したまだプロデュースされていない良質な企画は存在している。そうした環境において「ニッポンのイノベーション」の日常業務には何らイノベーティブな要素は見受けられない。

*2016年1月26日更新

ANEWはホームページを更新している。そこで自分たちが提供する価値についてこう書いている。

日本が抱える問題

  • グローバル市場で今求められている作品の傾向を掴むのが難しい
  • 米国の権利や著作者人格権が理解できず、時間がかかる、実現しないなどの状況に陥りやすい
  • 組むべきパートナーを見つけることが困難
  • 慣れない英語での交渉・契約締結を敬遠しがち
  • 受動的なビジネス判断になり、ハリウッドに有利な契約を許しがち
  • 作品をリメイクするにあたって適切な脚本家を見つけることが困難
  • 支援決定時の支援基準との適合性の検証

これが日本のエンタテイメント産業が生まれ変わるためのANEWが日々の業務で提供している価値だという。

しかし、仮にこの全てが解決したとしても、これを当たり前にやっている国際競争において日本が有利になることでも、映画製作の困難が解決されるものでもない。

「日本すごい」の掛け声に共鳴する国籍を選ばない世界のエンタテイメント投資など、こんなものには見向きもしないだろう。当然ANEWの4年間の経営が示す通り、日本のエンタテイメント産業には国民財産の浪費以外に残るものはない。

支援決定時の支援基準との適合性の検証

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  • コンテンツ権利者と海外市場をつなげる社会的ニーズへの対応が認められる。
  • 新たな付加価値の創出と高い成長性が認められる。
  • 民間業者からの資金供給を見込んでいる。
  • 映画の配当により一定期間の回収を見込んでいる。
  • 海外で稼ぐコンテンツ産業の新しいビジネスモデルを確立する革新性がある。

投資時に評価された項目は何一つ達成できていないのは現在の経営実態からみても紛れもない事実である。

ANEWは経済産業省の無知な政策に沿うよう、5億円の低予算映画から高度なVFXを要する大作までジャンルも規模も様々な「ハリウッド映画化7本発表し、存在意義の体裁を整えている。

しかし、この7本の全ては製作や公開が確約されているものではない。ましてや「設立から3年目で興行収入を得る」企画でも、「撮影準備中段階にある」企画でもない。言い換えれば、日本の公的資金を使って近い将来においても作られるかどうかも定かではない、不確かな企画を発表したに過ぎない。

「ハリウッド映画化」の発表とは映画化権を有している者であれば、いつでもできるPR活動である。

結局のところ、日本のクリエイティブ産業を停滞を成長につなげる「リスクマネー」60億円とは、海外で稼ぐ新しいビジネスモデルの構築どころか、何の根拠もない日本独自の思い込みに過ぎない。

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国内向け報道演出

ANEWにおいては、日本国内のみ通用する「日本すごい」を演出するあざとい国内報道戦略まで行われている。

ANEWは発表した『6000』のプレスリリースにはアメリカのパートナーからのコメントを紹介している。

「また、この独創性の高い原作を発見し、リメイクに関する映像化権を確保して、その上で作品開発に向けて私たちと協働するために尽力してくれたANEWに感謝します。」

そして、この「ハリウッドがANEWの尽力に感謝している」が一斉に日本で報じられた。しかしアメリカの報道を見ると、メジャー紙のハリウッドリポーターヴァラエティともこのような内輪の賞賛コメントは紹介されていない。

そもそも対等なパートナー関係であれば、企画開発の段階で共同製作相手の内輪のサービスや契約交渉においてあえて「感謝」の言葉にして公式リリースにするのは極めて不自然である。例え交渉に当たった弁護士や代理人に対してでも同じである。

ANEWが行っている企画発表とは日本の公的資金で映画化権を買い、発表したにすぎない。つまりハリウッドが日本のIPに投資したものではなく、日本の国民財産を払いお願いしたまでの企画である。

一般に日本の国民は巨大メディア資本が背後にあるメジャーハリウッド映画会社の映画製作とインディペンデントの映画製作との区別はつかない。「ハリウッド映画化」報じられれば、それを読んだ多くの国民がANEW発表の企画全てが我々が普段目にしている世界規模で公開されている「ハリウッド映画」になると思ってしまう。

実際にこのレベルの既成事実さえあれば投資の意思決定レベルでは「成長性がある」「革新性がある」「3年で利益が出る」などと評価し、無秩序に巨額の公的資金が投入されている。

ANEWが「感謝」されているとすれば、それは日本の公的資金が提供している無償サービスや開発資金援助についてだろう。また事業会社である以上、一方的な利益供与に対して「世界的有名プロデューサーがハリウッドがANEWの尽力に感謝している」と喜んでばかりはいられない。

日本のみ伝えられるこの内輪のANEW賞賛の報道、これは決して観客の関心を引くためや、投資を集めるためのパブリシティの目的ではない。これは「ハリウッド感」を演出し、国民にありもしないANEWの存在意義を錯覚させる国内向け報道スタントに他ならない。

再発防止策のための検証の必要性

今ある一つの懸念は、もともと時限的な会社として設計されたANEWの解散後の権利処理である。巨額公的資金が投じられ締結したANEWの契約を全て見直し、国民財産の毀損を少しでも防ぐ措置が必要となってくるだろう。

そもそも「ハリウッド映画化」と言っても、全ての映画製作体系は同じではない。そして、アメリカ映画や映画会社が全てが巨大メディア企業がバックにいるハリウッドスタジオのような継続的映画製作を実現できるものでもない。

”ニッポンのイノベーション”は何ら具体性を示さないまま、これが実現できる「革新だ」と60億円のでたらめな公的資金運用を決め、毎年それを好評価してきた。

お金を使う前は民間有識者たちがあれだけ推進していた政府会議においても、2014年以降のANEWについての議事録は確認できない。

そもそも産業革新機構のプロジェクトチームでANEWを設計した人間が、設立後代表取締役と社外取締役として会社を運営するなど、専門性、独立性、中立性のない経営体制が放置されてきた。ANEWも利益相反の経営体制がありながら、HPにすら経営者の名前を載せていない。

そこへ監督官庁である経済産業省も国会において虚偽の経営説明を行い自ら天下りするなど、公的資金運用の監視体制は完全に崩壊している。また健全な公的資金運用のために定められたルールに反し、国民への説明責任をも蔑ろにしている。

何より虚業に投資を沈めても、経営者や官僚は一切痛まない。これが「官民一体」で推進するクールジャパン政策の実態である。そしてこの無駄を負担するのは紛れもなく国民財産である。

こうした産業未来にいない無責任な人間による社会的意義を偽った公的資金の横流し行為は後を絶たない。空虚な「クールジャパン」政策を推し進め発生したALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKSにおいては、今後各所における厳しい責任追及をもって検証されなければいけない事案である。

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