クールジャパン官製映画会社ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS失敗の不可解なその後

経済産業省が企画し、2011年に所管の産業革新機構が60億円の投資決定をし設立された官製映画会社のALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS(以下、ANEW)が、出資額22億円2000万円をほぼ全損する形でフューチャーベンチャーキャピタル社(以下、FVC)に3400万円売却されてから1年が経過した。

産業革新機構が売却時に発表したプレスリリースによると、2017年内に製作決定に至る見込みの作品が1本あることに加え、京都に本社を置く独立系ベンチャーキャピタルで、米国拠点を通じた事業展開も行うことができるFCVが、ANEWの今後の事業展開や成長可能性を慎重に検討した結果、ふさわしい売却先であったとしていた。

しかし、現状を見ると、産業革新機構の説明していた内容は矛盾を極めており、同時に、そもそもの公的資金投資に大きな疑問が生じている。

旧経営陣取締役へのMBO転売

現在、株式会社ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKSは株式会社ANEWに社名を変更し、所在地も港区虎ノ門から、千代田区紀尾井町に移転している。また2017年11月9日には資本金の額を11億円から1億円に減額する変更を行っている。

さらにFVCは、2017年5月31日株式譲渡からたった5ヶ月後の10月31日に旧ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKSの取締役で、売却後に代表取締役に就任していた伊藤航氏が同年9月20日に資本金100万円で設立したANEW HOLDINGS株式会社にマネージメントバイアウトを行った。

新経営体制後も赤字、累計損失は21億3000万円に

ANEWは第7期の決算公告を発表しているが、売上金286万円、純損失は3億3876万円と赤字を続けている。旧ANEWからの累計赤字17億9246万7000円と合わせると21億3322万7000円となっている。

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一向に作られない「ガイキング」

旧ANEW売却直前の企画開発状況を見ると、産業革新機構がプレスリリースで説明していた年内製作決定見通しのある当該企画は「ガイキング」であると分かる。しかし、2017年に「ガイキング」がグリーンライトになった事実は見当たらない。

「ガイキング」の製作決定は旧ANEWが設立当時から言われ続け、「ガイキング」の製作決定がANEW事業の投資回収の根拠であるとされてきた。当時の経産省のメディアコンテンツ課課長の伊吹英明氏や大臣審議官中山亨氏は内閣府の知的財産戦略委員会や国会の経済産業委員かいで「経営が順調である」旨の答弁を行っている。

こういったことからも、産業革新機構は責任逃れのために最後までどうしても「ガイキングのグリーンライト」と言い続ける必要があったのではないかと疑わざるをえない。

映画化権の返還

さらに新ANEWは旧ANEWが企画開発した7本すべてを引き継ぐと発表していたが、すでに映画化権をパートナー会社に返還し、ANEWが映画化する権利を失っている作品も存在する。

返還された企画においては、ANEWに企画開発期間中に創作した脚本などの創作物の権利は残っているが、そもそもそれを映画化する権利を失っているのでその脚本を元に映画化することは出来ない。例えば、仮に1億円で開発した脚本であっても、活用できない無価値な知的財産となる。

もちろん、今後、再度IP所有者と交渉し、映画化権を取り直すことは可能ではあるが、その間に第3者が開発権を購入してしまった場合、その脚本を活用することはできなくなる。

映画化権とは一度取得したら永遠に保持できるものではない。「オプション契約」と言われる時限付き企画開発権も一般的な契約だが、これはその期間内で資金調達が行われない場合は、そのまま製作権はIP所有者に返される。

さらに、例え本契約料を満額支払い映画化権を購入しても、製作に至らず長期間の塩漬けによって将来のIP活用が妨げられないよう、IP所有者側が一定期間を過ぎたら買い戻す条項を定めるのも一般的である。

このように「映画化権を持っている」だけではさほど資産にはならない。

TIGER&BUNNYからの撤退

旧ANEWの7企画のうち、今年に入り進展を見せた企画もある。それは2015年にNYコミコンで発表された「TIGER&BUNNY」である。

今年のカンヌ映画祭で、向こう3年で10億ドル(約1100億円)を製作資金に運用できるグローバルロード社が製作に参加すると発表された。確実な製作資金を持つ会社が参加したことで、「TIGER&BUNNY」の映画化は一気に現実味が帯びたように思える。

しかし、同時にANEWは「企画開発プロデューサーとしての役割終えたと「TIGER&BUNNY」企画からの撤退を発表している。

通常、脚本やプロデューサー手数料等は製作が成立した時に「コスト」として回収できる。さらにプロデューサーはプロデューサーシェアと言って利益配当に参加でいるのが一般的である。

それにもかかわらず、この段階で開発の出資プロデューサーが「企画開発プロデューサーとしての役割を終えた」と、この企画から撤退する理解しがたい。

公的資金でANEWが行ってきた事業とは、決して「TIGER&BUNNY」のIP所有者であるバンダイナムコピクチャーズに雇われて、企画開発プロデュース、企画開発コンサルティングサービスを提供したというものではない。実際に、開発期間中にサービス対価を受け取った事実は決算公告に計上されてこなかった。

これについては、経済産業省のメディアコンテンツ課の統括官は、ANEWはIP所有者に映画化権料を支払っているとも説明している。

これらを総合すると、ANEWとは本来の株式会社としての利益追求をせずに、公的資金を使い一方的にIP所有者に利益供与するという背任的経営をしていたことになる。

さらに経産省の伊吹英明氏は「日本ではこの会社を通さないとそもそもハリウッドで仕事ができない」と、ANEWの独占的立場を語る答弁していた。仮に本来受け取るべきサービスの対価を受け取らず、日本のIP開発を集めていたのであれば独占禁止法の不当廉売に該当するように思える。そしてないより、不当廉売を公的資金でさせていたのであればより民業を圧迫しないという官民ファンド運用の観点からも極めて悪質な事業であったと言えよう。

このことからも旧ANEWという会社が、いかに映画製作の常識からかけ離れたでたらめの事業設計で公的資金を引き出し、これに利益回収の高い蓋然性があると監督官庁ぐるみで国民を欺き、自分たちには巨額ボーナスを支給するなどし、22億円もの国民財産を損失させたのかが分かる。

*2018年9月6日追記

「Tiger&Bunny」への製作参加を表明していたグローバル・ロード社が、設立から1年も持たずアメリカ連邦破産法を申請した。この直前から資金難についての報道があり、経営権が債権者である銀行に移行し、従業員の大量解雇などを行なっていた。これにより、グローバル・ロード社によって「Tiger&Bunny」が前進することは事実上消滅したといえる。

無責任経産省の開き直り「我々のチェックで損失を食い止めた」

今、経済産業省は、内閣委員会でANEWについて次のように述べているという。

「我々の監督があったから、当初の投資決定の60億円まで損失を拡大させることなく22億円の損失に食い止めることができた」

実に呆れた物言いである。

そもそも誰がこの会社を企画し、主導したのか?

そもそも誰が法律で定められた業績報告書に、代表取締役兼取締役だった産業革新機構役員を「社外取締役」であると虚偽の記載し、「本来はやってはいけない投資」(財務省談)があたかも公的ファンドガイドラインに沿った投資であるかのように経営体制を偽ったのか?

そもそも誰が職員をANEWに出向させ、「経営は順調である」旨の答弁を国会や政府会議で繰り返し、時に「この会社を応援してください」とまで答弁し、偽りの「日本再生」を正当化してきたのか?

そもそも誰がすでに将来見通しが破綻した後においても、11億円の追加投資を許し、結果的に国民財産の損失拡大を招いたのか?

そもそも誰が安全な国民財産運用の担保となる法律を捻じ曲げ、投資決定に必要と定められた大臣意見を形骸化し、実質産業革新機構との事前の口頭の談合で決済し、その他の一切の公文書は存在しないとしたのか?

行政腐敗と偽りのクールジャパン事業の検証を

上記のとおり、産業革新機構が説明した「年内製作決定の見通し」「将来の成長性」を理由にしたFVCへの売却は、その後の事実に照らし合わせても整合性がないと言えよう。
産業革新機構とは次世代産業の育成を目指して、法律に基づき設立された会社である。決して株式上場で儲けたからといい、その法律に違反し、国民に虚偽の報告し、自分たちで自分たちが経営する子会社を作り22億円で好き勝手していいというものではない。

そもそも、経産省、産業革新機構、そしてANEWが約束していたものは、単にハリウッド映画投資で儲ける、儲けないの話ではなく、お金やノウハウを広く産業に還元させることで日本のエンタテイメントを再生させるというものであった。この約束は何一つ守られていない。

監督官庁が語る「産業革新機構はジャパンディスプレイ上場で儲けているからANEWの損失は特段に問題ではない」「我々の監督によって損失を食い止めた」の言葉で、映画製作の常識的な法務、契約では考えられない22億円もの不可解な損失を招いたクールジャパンの行政腐敗を正当化してはならない。

売却から1年経っても、経産省の嘘や、産業革新機構および旧ANEW経営者たち責任が一切評価、検証されないまま何事もなかったかのように処理されたいる。

存在しない「日本再生」を語り、日本の産業で働く人を無視した偽りのクールジャパン事業、逃げ得は許してはならない。

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ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS 2.0: スマホゲーム会社のハリウッド映像事業子会社設立報道と巨額国民財産を毀損させたクールジャパン官製映画会社の疑問点

2017年10月3日、スマートフォンゲーム会社の株式会社アカツキがハリウッドにグローバル映像事業子会社AKATSUKI ENTERTAINMENT USAの設立を発表した。

同社のプレスリリースによると、新会社の代表取締役にアンマリー・ベイリー氏が就任し、日本オフィスの責任者に鈴木萌子氏、子会社と親会社アカツキのアドバイザーにサンディー・クライマン氏を迎えいれるという。またリサーチマネージャーにニコラス・ザバリー氏が就任している。

気になる点は、上記に挙げた4名が株式会社ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS(ANEW)の出身者であることである。また、新会社の所在地もクライマン氏の個人会社Entertainment Media Ventures社と同じ所在地にあった旧ANEW米国支社と同じ住所となっている。

ANEWとは、経産省がクールジャパン政策一環として主導し、約95%が政府出資の官民ファンドの産業革新機構が60億円、100%の出資を決定し、2011年に設立された官製映画会社である。ANEWの事業目的は、日本コンテンツの海外展開として、日本のIP を使ったハリウッド映画を製作するというものであった。

しかし、ANEWは設立当時から問題を抱え、日本側の最高執行責任者(COO)が次々と交代、た経産省幹部が国会等で一定期間内の投資回収の蓋然性等について答弁するも、投資決定時の将来見通しは早々と破綻状態に陥っていた。

毎年赤字経営を続けていたANEWは、通算で7作品の企画開発を発表したものの、1本の映画も撮影に至ることなく、2017年6月に産業革新機構がそれまでに実行した22億2000万円の出資をほぼ全損する形で別のベンチャーキャピタルに3400万円で身売りされた。

上記のサンディー・クライマン氏は、2012年にANEWの代表取締役兼取締役に就任し、ANEWの米国支社であるANEW USAとその制作子会社ANEW PRODUCTIONS LLCの代表も務めた。また、クライマン氏の個人会社の従業員であったアンマリー・ベイリー氏が企画開発部ヴァイスプレジデントを務め、鈴木萌子氏もビジネス開発部ヴァイスプレジデントの役職にいた。また、リサーチマネージャーのニコラス・ザバリー氏も同じくANEWでリサーチャーを務めていた。

プレスリリースにある新会社の事業説明を見ると、内容は旧ANEWと酷似しており、「日本とハリウッドとの橋渡し役」という企業理念まで同じになっている。

つまり、新会社は、所在地といい、人員といい、何から何まで旧ANEWの業務執行体制となっており、「ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS 2.0」形態だといえるのかもしれない。

今回のアカツキの映像子会社設立の報道には不可解な点も存在する。

今回の子会社設立ニュースは日本の新聞社と米エンタテイメント紙「ヴァラエティ」「ハリウッドレポーター」らによって報じられたが、その内容は日米報道で大きく異なっている。

これまでの日本の報道では、彼らが国策クールジャパンの暴走で日本の巨額公的資金を沈めたALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKSの出身であることに一切触れていない。

一方、米紙「ヴァラエティ」「ハリウッドレポーター」とも「ALL NIPPON ENTERTAINMEN WORKS」に触れ、「ハリウッドレポーター」に至っては、サンディー・クライマン氏とアンマリー・ベイリー氏が日本政府支援で設立された官製映画会社の出身者であるととともに、ANEWが1本の映画も完成させることなく破格の安値で身売りされた事実までしっかりと報じている。

このように、日本の公的資金、日本の公益に係る関心事の報道が、米紙の英語報道だけで、日本語では一切報道されていない事態は極めて大きな問題のように思える。

さらに新会社の業務体制には別の懸念もある。

第一に、旧ANEWの失敗による日本の公的資金の巨額損失が、損失を招いた会社の経営者、役員たちの個人的利益に繋がっていると思われる点である。

今回の新会社の事業とは、旧ANEWの人たちよる、旧ANEWと同じ事業になっている。そうなると、当然これには、旧ANEWの業務として行った海外フィルムマーケットや各地のイベント参加や接待を通じ培ったプロデューサーとして重要な人材プール、リサーチの成果、ノウハウ、国内外のコネクション等が利用されるのはいうまでもない。

また、旧ANEWは、官民ファンドガイドラインに「民間の競争に与える影響の最小限化」も定められているにもかかわらず、日本企業IPの英語資料を作り、契約、法務、交渉を無料で行うなど、本来対価を受けるべきサービスを公的資金で肩代わりする形で不当廉売し、日本IPの管理を独占してきた立場だった。ANEW設立を主導した経済産業省報政策局文化情報関連産業課の伊吹英明課長も『2012年5月15日内閣府コンテンツ強化専門調査会』で、「日本のコンテンツはここに預けないとそもそも仕事ができない」とANEW事業の日本における独占的立場を宣伝していた。

このように、これらは実質、日本の公的資金の巨額損失によって培われた財産であると言っても過言ではない。

そもそもANEWは、「ANEWで蓄積するノウハウを広く日本の産業に還元し、日本のクリエイティブ産業の発展に繋げる」という目的に社会的意義を認め、国が公的資金を出資した側面がある事業である。

しかし、当初の公的資金投資の意義とは裏腹に、ノウハウはおろか、ANEWに係る一切の情報は不開示という現状になっている。なお彼らの経営下の広報は、実質公的資金で運営されているにも関わらず。会社法に則った「通常の株式会社である」ことを理由に問い合わせにも応じてこなかった。

また「ヴァラエティ」報道は、ANEW以前にはプロデューサー実績が皆無であった社長アンマリー・ベイリー氏の経歴を紹介している。

そこには、今回の新会社を率いる彼女の日本コンテンツ関連の企画開発の実績として、ロン・ハワードのイマジンエンタテイメントと開発した『Tiger&Bunny』、デプス・オブ・フィールドとリュック・ベッソンのヨーロッパコープとの『藁の盾』テレビドラマ化開発が宣伝されおり、一方的に開発コストを日本の公的資金で負担するからこそできた旧ANEWの企画開発が、新会社のパブリシティに利用されている。

次に、新会社の経営方針を見ると、旧ANEWの経営実態との整合性に疑問が生じている。

ヴァラエティ」報道によると、新会社は、2018年の第一四半期中に第1弾作品の製作決定(グリーンライト)を目標にしていると書かれている。

では、旧ANEW時代に22億円もの出資を実質全損させ、6年間で1本の映画も撮影に至らない業務を実施してきた当事者らが、仮に今から6ヶ月以内に製作決定を実現できるのであれば、なぜそれを日本の公的資金で運営した業務の時にやらなかったのだろうか?

なお報道によると、新会社は既に3本の企画開発に着手しているというが、彼らが経営、業務執行をしていた旧ANEW時代は最初の3作品の企画開発を発表するまでに3年の月日を費やし、10億円以上の赤字を作っていた。そのうち第一弾の『ガイキング』に至っては、もともと開発されていた企画に旧ANEWが後乗りしただけの作品である。

また、2017年8月6日の日本経済新聞の記事『革新機構、苦戦のベンチャー投資』には、旧ANEWの経営失敗の分析として、高額報酬でサンディー・クライマン氏を社長に迎え入れ、米国に拠点を設立したにもかかわらず「日米の連携を欠き運営費が膨らんだ」というコメントが紹介されている。

決算公告によると、旧ANEWは6年間の総売上高が1500万円にも関わらず、自分たちへの1回のボーナスに2000万円を支給するような杜撰な経営を行っていた。このような杜撰経営を許した背景には、本来、経営チェックと公的資金運用チェックを行う経営者、株主、監督官庁による利益相反の結託があったからに他ならない。

では、旧ANEWと同じ人たちによる新会社が、旧 ANEWで失敗した「日米の連携」を上手く進め、自分たちへの高額ボーナスなどを我慢し、「運営費の効率化」が可能なのであれば、なぜ日本の公的資金を使った業務の時にやらず、無秩序な経営を続け、巨額の国民財産毀損を招いたのか?

いうまでもないが新会社と親会社のアドバイザーに就任したサンディー・クライマン氏は会社法において責任を負うべき旧ANEWの最高執行責任者(CEO)の代表取締役である。また、新会社の代表取締役のアンマリー・ベイリー氏、日本責任者の鈴木萌子氏はANEWの取締役ではなかったものの、両氏はヴァイスプレジデントと業務執行に重要な役員であった。

このように、同じ人たちによる、同じ事業にも関わらず、新会社と旧ANEWのこの差は一体何なのだろうか?

もし、今回の新会社で上記の問題が解消できるというのであれば、それは旧ANEWの経営は「損をしてもどうせ国の金だから」という甘えから、極めて杜撰で背任的な経営を行っていたといえるだろう。

さらに、今回の新会社は官民ファンドである産業革新機構の役割と投資意義への矛盾も浮き彫りにしている。

もし、旧ANEWと全く同じ事業が、今回のアカツキのように、一民間企業の経営判断程度できる次元の事業であるならば、国が「民間が取れないリスクマネー」と称し、監督官庁の経済産業省がサンディー・クライマン氏の補佐役という役職に職員を出向させてまで関与する必要性があったのだろうか?

また、新会社運営体制は、産業革新機構役員をそっくり抜いただけの運営体制である。仮にこの体制で事業が回るのであれば、ほとんど映画製作知識もないと思われる産業革新機構の役員や、経産省出向職員を公的資金や税金で食べさせる意味がどこにあったのだろうか?

旧ANEWが支援した会社を見てみると、日本テレビ、バンダイナムコ、東映アニメーションなど数十億円から数百億円の巨額の経常利益を上げている大企業たちである。このような会社はそもそも国の金でアメリカ人脚本家を雇わなくとも、自己資金で企画開発ができていたはず企業たちである。

さらに、個人的に注視しなければいけないと思うことに、この新会社と2017年の政府施策との関係が挙げられる。

内閣府の「知的財産推進計画2017年」によると、具体的な投資先は明言されていないものの、新たに映画振興施策として「官民ファンドによるリスクマネーの供給を講じる」ことが謳われている。

新会社の事業が「日本とグローバル市場との橋渡し役」と謳われていることや、過去の公金の流れからも、これが政府が推進し、支援対象にしている「クールジャパン」に該当する可能性が高いと思われる。

例えば、こういう経済産業省などにとって「国の金が出しやすい」体裁が整った場合、こうして看板だけ変え、中身は同じ人たちの会社に、産業革新機構からクールジャパン機構と官民ファンドの看板を変えただけの公的資金や、クールジャパン関連の海外展開支援の補助金が投じられる可能性がないともいえないだろう。

今回の報道に見るとおり、巨額の国民財産の毀損を招いた旧ANEWの大失敗が発生しても、その経営責任者、役員らは全く痛んでいない。これは、監督官庁が天下り、官民ファンド出資で行う杜撰な経営の損失は一方的に国民負担に回すことができ、その責任が一切総括、検証、情報公開されずに済まされる仕組みだからである。これまでANEWの失敗に関する国内報道もごくわずかである。

産業革新機構はANEW株式売却の際に損失を非公表とした。また、産業革新機構のANEW株式売却のプレスリリースを見ると、一般の国民の普通の注意と読み方で読んだ場合、公的資金を投入したANEWが役割を終え、あたかも産業革新機構が何かいいことしたような印象まで受ける内容になっている。

つまり、ほとんどの国民は、産業革新機構が22億2000万円を投じたにもかかわらず、監督官庁の経産省が産業革新機構運営に係る法令違反定められた業績評価に虚偽の記載を続け「本来やってはいけない投資」をごまかしたことや、産業革新機構役員による利益相反経営体制、何ら成果も出さず破格で身売りし大損させた、という事実を知ることができないでいる。

今回の新会社の報道は、旧ANEWの背任的経営や、公的資金投入そのものに問題があったことを明示していると言えるだろう。旧ANEWの失敗の総括、検証、情報公開、報道は、将来のこの分野の日本の発展のためにも絶対に必要なことだと思う。

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クールジャパンと行政腐敗:補助金適正化法無視で支払われた経済産業省の裏金補助金20億円

(*この投稿は情報公開・個人情報保護審査会の答申で判明した新事実や事実関係についての追加行政開示文書を踏まえ2017年6月29日の投稿を2017年9月4日に再編集したものです)

事件の経緯

平成24年度補正予算請求(経産省123億円、総務省32億円、計155億円)

*経済産業省発表資料に「委託は映像産業振興機構(VIPO)を想定」と、公募前に委託先の意思表明)

平成25年2月27日公募開始

平成25年3月14日公募結果発表

経産省の”想定”通り映像産業振興機構が受託、応募数3件。

受託時の事業計画

民間への補助事業費 151億円

映像産業振興機構の事務管理費 約4億円

平成26年1月22日 映像産業振興機構より23億4100万円を事務管理費への流用する変更届け提出

平成26年2月14日 経産省承認

新区分

民間への補助事業費 127億円

映像産業振興機構の事務管理費 28億2500万円

変更目的

管理事務費ー広報費「事業者と一体化したプロモーション事業費」に20億円

「事業者と一体化したプロモーション事業」についての事業計画の詳細は提出なし

平成27年5月7日 経産省支援事業ジャパンデイプロジェクト発表

運営:映像産業振興機構、クオラス、アサツーDK)

ジャパンデイプロジェクトとは:新規流用区分の補助金を使い、「経済産業省支援事業」として発表された、カンヌ映画祭、パリジャパンエキスポ、台湾漫画博覧会、カンヌMIPCOM、東京イベントを計画した映像産業振興機構の自主事業

同5月 カンヌ映画祭イベントを実施

経産省メディアコンテンツ課課長が出張(*なおこの課長は直後に異動)また出張目的にある「今後の日本の施策作りのための諸外国との意見交換」と面会した3名は全て映像産業振興機構の手配によるもの。

カンヌ事業に批判が集まり、複数週刊誌が経産省へ取材を行う。直後、ホームページから関係者や「経産省支援事業」の文字を削除。

同7月 パリジャパンエキスポ実施

その後、ジャパンデイプロジェクトの残りの事業の中止を発表。

同12月 J−LOP補助事業終了

映像産業振興機構は同11月、12月に「運営費」約6億円、平成28年1月に約2億5000万円の「広報費」の支払い請求、経産省も承認しこれを支払う。「事業者と一体化したプロモーション事業」の一部は途中で中止されるも、映像産業振興機構は全ての「広報費」を使い切る。

不都合だらけの「適正な税金運用」と「クールジャパン」

政府が諸手を挙げて推進しているクールジャパン政策には「間接補助金」を使った巧妙な裏金流用のスキームが存在する。

経済産業省が作り上げたこのスキームの中では、税金の使い道の透明性を確保するための事業者名や事業内容の公表は行われない。また、補助金適正化法を無視した支払い請求も問題なく処理され、辻褄の合わない会計報告書も後になって秘密裏に操作できる。

こうした国民の健全なチェックを許さない不透明な税金運用システムを作り上げると、ここに流れる税金はどんなに不可解な事業や辻褄が合わない不都合な会計報告が行われようととも「1円の無駄もない適正な税金」と認定される。

経団連の思惑で動くクールジャパン海外展開等促進事業補助金342億円

経済産業省はこれまでコンテンツ海外展開促進事業(J-LOP、J-LOP+、JLOP、J-LOP4)と称し、平成24年度補正予算から4回の事業を実施、合計342億円を拠出している。そしてこれら4つの事業を全てを連続で受託したのが特定非営利活動法人映像産業振興機構である。(*J−LOPは経産省123億円、総務省32億円の共同基金)

「コンテンツ海外展開促進事業」とは経団連の政府への予算要望を受けできた制度である。またこの事業を全て受託している映像産業振興機構は、2004年に経団連の「知的財産推進計画」の設置提言を受けつくられた法人である。また映像産業振興機構の理事は経団連のコンテンツ部会長が務めている。

つまり、経団連が予算要望をした巨額補助金を、経団連が設置提言して作られた法人が連続して受託し続けているという、まるで経団連の意思で全てを仕切っているような制度がこのクールジャパン海外展開等促進事業である。

さらに経済産業省が出した当時の概算要求の資料を見ると、経済産業省はこの事業の設置前から「映像産業振興機構の受託を想定」とあらかじめ受託先の意思表明をしており、実際に短期公募でその通り映像産業振興機構が受託する不可解な公募結果になっている。

なお内閣府の「知的財産推進計画2017」によると、今後もJ-LOPの継続が謳われている。

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裏金「広報費」20億円の交付申請と承認

経済産業省からの開示文書によると、平成24年度補正予算で作られた第1弾事業のJ-LOPは、予算155億円のうち、民間への「事業助成金」と、映像産業振興機構に流れる「事務管理費」とが区分されている。

当初の映像産業振興機構の交付申請書によると、当初承認を受けた経費配分は、補助事業の運営を行う映像産業振興機構の「事務管理費」が2年間で約4億円、そのうち2500万円が「広報費」となっている。

しかし、2014年1月22日、映像産業振興機構から民間への事業助成金の区分から23億4106万円を自らの「事務管理費」に流用する変更届が出されていた。その流用の目的は「民間事業者からの問い合わせ、意見の対応」という一般的な補助金の広報業務から、「事業者と一体化した広報型プロモーション事業の実施」に変更され、当初のおよそ80倍の20億2800万円を基金管理団体自らが使う「広報費」に流用するというものであった。

なお、情報開示された変更届によると、変更事項に「事業者と一体化した広報型プロモーション事業の実施」とだけ書かれ、具体的にどんな事業を実施するかなど記載された文書は一切添付されていない。

しかし、経済産業省は何ら具体的な内容の映像産業振興機構からの変更届に対し、全く内容を問わず「内容を審査した結果、適当と認められる」とし、同年2月14日に経済産業大臣がこの流用を承認した。

なお経済産業省は消化されたこの20億円についての公文書は一切保有しておらず、具体的に映像産業振興機構がどの民間事業者とどのような「一体化した広報型プロモーション事業」を実施し「広報費」を消化したかについての質問には「いちいち覚えていないが適正であったことは確認済み」と回答した。 クールジャパンと行政腐敗:補助金適正化法無視で支払われた経済産業省の裏金補助金20億円 の続きを読む

国策クールジャパンの暴走、経済産業省主導で行う官民ファンド産業革新機構を使った法令無視の公金横流しスキームの実態

2017年5月31日、産業革新機構はフューチャーベンチャーキャピタル(以下FVC)への株式会社ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS(以下ANEW)全株譲渡を発表した。ANEWとは、日本のIPでハリウッド映画を作るという目的で経済産業省が企画を主導し、その後押しを受け産業革新機構が100%、60億円の出資決定を行い設立された官製映画会社である。

産業革新機構はこれまでANEWに対し、資本金及び資本準備金合わせ22億2000万円の投資を実行しているものの、投資実行時に国が評価していた成長性、革新性、社会的意義、投資回収の高い蓋然性等の将来見通しは全て破綻していた。ANEW設立以降に撮影に至った映画は0本、一方、成果がなしにも関わらず今日まで少なくとも18億円以上の赤字を垂れ流している。

2014年に財務省は産業革新機構の出資会社への監査未実施に対し改善要求を行っている。当時の担当職員は「ANEWのような会社にはこれ以上公的資金からお金は出ないでしょう」という見解を語っており、ANEWの1年の赤字額が4億円程度であることを総合すれば、映画ビジネスにおいての持続的可能な経営は不可能だったといえ、このまま行けば近々破産するのが目に見えていた会社だといえよう。

経済産業省は毎年施策方針を発表しているが、これまで「コンテンツ海外展開の国策」の柱として掲げきたANEWを今年度の資料からは削除している。このことからも、経済産業省も今年中のANEWの実質的な経営破綻やただ同然の身売りを予想していたに違いない。

そもそも、ANEWは設立当時から映画ビジネスにおける利益回収の根拠を一切示さず、「クールジャパンらしさの追求」、「グローバルモデルによるイノベーションで日本が生まれ変わる」など陳腐な経営理念のコピーのみで60億円の投資を決定した。また、映画製作で配当を得る将来見通しなどが完全に破綻しているにも関わらず、2014年の11億円を含2回の追加投資を実施し、損失を拡大させた。

その間、産業革新機構の業績をチェックするはずの監督官庁である経済産業省幹部は「ANEWの経営は順調」という旨の経営説明を国会等で行い、さらには、法令に定められた行政文書に虚偽記載まで行い本来行ってはいけない利益相反経営体制をごまかしている。

こうした行政ぐるみの法令及びガイドラインを歪めた巧妙な公金横流しスキームの中では、投資への客観性を欠くだけでなく、ガバナンスも効きにくい構造に公的資金を注ぐ構造になっている。映画コスト回収の責任を負うことなく国の金だからとハリウッドにばら撒くだけばら撒いても経営者は痛まない。映画作りの一番楽しいところだけを謳歌した経営はさぞかし楽しかったに違いない。

産業革新機構は官民ファンドとはいうものの、国が95%出資と実質は官ファンドであり、ANEWの巨額損失も一方的に国民に押し付けられる形になっている。投資の経緯についても不透明で、実際は経済産業省と産業革新機構と口頭の談合で決められ、法に定められた大臣意見も事前に複数パターン用意されていた。また、官民ファンドという皮を被ると、国民に対し情報公開をしなくてもいい制度にもなっている。

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経産省による法令違反と利益相反経営体制への投資事実の隠蔽

ANEW投資には明確な法令違反が確認できる。95%以上が出資者「国」の産業革新機構には「産業競争強化法」に基づき、経済産業省による毎年の業績評価が義務付けられている。当然ANEWに対しての業務評価も行われてきたが、今日まで発表されている平成24年度から平成27年度の業績評価にはいずれも「社外取締役2名を派遣した」と記載されている。

これだけを見ると、報告書の書面上は株主の官民ファンドと投資先企業との「通常の株式会社」における健全な監視、牽制関係が存在するように思えるが、ANEWとは産業革新機構マネージングディレクターの高橋真一氏が事業設計を行い、設立後に代表取締役に就任した会社である。その後、ANEWの経営責任者はころころと何度も交代したが、高橋真一氏が社外取締役に就任し、中立的な見地でANEWの経営を監視、牽制する立場にいた事実は一度もない。

そればかりか、設立時の社外取締役は高橋真一氏の下で、共にANEWの事業設計に携わった長田志織氏が就任しており、産業革新機構の上司と部下が自分ら経営者になる会社に100%出資する利益相反関係にあった。こうした利益相反の経営体制が存在していても、ANEWのホームページには高橋真一氏だけでなく、これまで就任した産業革新機構の役員情報は一度も掲載されてこなかった。

経済産業省はこの設立に密に関係し、メディアコンテンツ課伊吹英明氏課長はロサンゼルスの出張で現地聞き取り調査を行っている。さらに伊吹英明氏と高橋真一氏はANEW設立前の2011年8月26日に外国人記者クラブで会社設立の報告まで行っている。さらに、経済産業省は設立直後に職員まで出向させていて、この事実からも、経済産業省が高橋真一氏のANEWでの立場を知りえないというのは考えられない。したがって、故意に「本来やってはいけない投資」を踏み切るために法令に定められた業績評価に毎年虚偽を書き続けたといえ、明確な違法行為によってANEWが設立、運営されてきたと言えるだろう。

その後、ハリウッドのエージェント時代に日本企業が関わる巨額買収契約締結の経験があるサンディ・クライマン氏がCEOに就任しているが、そもそもクライマン氏は産業革新機構が後から連れてきたCEOであるとの発言が議事録に残っている。また、ハリウッドの映画契約ではプロデューサーとは映画会社の幹部が自動的に名前が挙がるものではなく、プロデューサー契約では、映画での報酬、利益シェアにも参加できる。したがって、ANEW企画作品にプロデューサーとして名を連ねているクライマン氏は、日本の公的資金で運営するANEWと映画の両方から稼ぐことができる非常好都合な形にもなっている。

さらにANEWのアメリカ法人はクライマン氏を代表とし、同氏の個人会社の住所に登記されていたANEW USAの他に、ANEW USAの会社ANEW PRODUCTIONSが設立されている。1作品も撮影に至っていないにも関わらず、同じクライマン氏代表、同氏個人会社と同じ住所の制作子会社を設立していた経緯も極めて不透明である。

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報告(プレス・ブリーフィング):株式会社 All Nippon Entertainment Worksの設立 (2011年8月26日) | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(

官民ファンドガイドラインを歪め、国が国民に対する説明責任、情報公開を拒否できる制度

官民ファンドには、活用推進に関する 関係閣僚会議で決められた「官民ファンド運営に係るガイドライン」というものが存在する。その中の「監督官庁及び出資者たる国と各ファンドとの関係 」の項目には「投資決定時における適切な開示に加え、投資実行後においても、当該投資について適切な評価、情報開示を継続的に行い、国民に対しての説明責任を果たしているか」とある。

2012年9月15日発行『IPマネージメントレビュー6号』のインタビューにて、ANEWの最高執行責任者黒川祐介氏(当時)は「ANEWは数年に渡る経済産業省の企画を経て設立された」と述べている。また『2012年5月15日内閣府コンテンツ強化専門調査会第10回』において、経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課課長の伊吹英明氏は、ANEWに設立に関し、ロサンゼルスに出張し現地エンターテイメント弁護士から聞き取り調査を行ったと答弁していることが記録に残っている。

これらの事実を根拠に、経済産業省に対して情報公開請求を行ったところ、経済産業省はANEW設立に関する公文書は確認できないと不開示決定を行っいる。これに対しては異議申し立て(現在審議中)を行っているが、経済産業省はそこで黒川氏、伊吹氏の発言は個人の立場で勝手に言っていることだとし、公文書の不存在を主張し、異議の棄却を求めている。

なお、産業革新機構が経済産業大臣に提出した『日本コンテンツの海外展開推進会社設立について』(2011年6月27日)の資料は開示されたが、産業革新機構のロゴ以外すべて黒塗り開示となっている。

経済産業省は「当該法人の競争上の地位その他正当な利益を損なうおそれがあると認められる」との理由を述べているが、そもそもANEWとは「ハリウッド映画化のノウハウを広く国内に還元する」という理由で公的資金出資が認められている会社でもあるため、この不開示理由も極めて矛盾したものである。

産業革新機構は、今回のFVC社への株式譲渡についてはその金額を非公表と発表した。

官民ファンドのガイドラインに国民に対する説明責任が明記されていながらも、現状は、映画企画開発では考えられない18億円以上赤字を垂れ流した経営の事実があろうが、公の金で作られたANEWについての設立経緯、経営状況、Exitに関する情報は一切開示されない。

たとえ、ガイドラインには「投資実行後における、適切な評価に基づく、各投資先企業についての財務情報、回収見込み額、投資決定時等における将来見通しからの乖離等の把握」とも定められているが、経産省はこれらに対し「公文書は作成も保有もしていない」を押し通した。

すなわち、官民ファンドとは、国は決められた国民への説明責任を蔑ろにし、官民一体で公的資金に関わる情報を完全ブラックボックス化できる非民主的制度になっている。

(2017年7月20日、8月13日加筆)

6月29日にFVC社は有価証券報告書においてANEW買収額がわずか3400万円であったと発表した。また、8月10日にはANEW子会社化による負ののれん発生益 2億3200万円を特別利益として計上したことを発表した。

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ガバナンスが効かない利益相反行政と経営体制による公金横流し

ANEWはこれまで7作品の「映画企画発表」を行っているが、配当はおろか、撮影に至った映画は0本である。この成果に18億円以上を費やしたという結果は、映画ビジネスの常識では考えられないナンセンスなものである。

こうした無秩序経営と国民財産の毀損を野放しにした原因は、上に示した通り、監督官庁の経済産業省が設立を企画、職員を出向させ、100%株主だった産業革新機構の上司と部下が代表取締役と社外取締役の関係で経営を行うなどを行った利益相反の行政と経営体制にあるといえる。

その証拠に、ANEWは第4期の決算公告に2057万5000円の「賞与引当金」を計上している。また、第6期決算公告には初めて売上高1500万円を記録している。これは産業革新機構が株式譲渡を発表したプレスリリースにある「年内中に製作開始予定の作品」の脚本代がプロダクションコスト(製作費)としてリクープできた金額と推測できるが、このANEWの6年間の総売上高は、経営者が自分たちで決められ、自分たちへ支給する1回のボーナスに満たない。ちなみに第4期といえば、すでに「3年で利益が出る」といった将来見通しの破綻が判明している年である。

ANEWとは単なるハリウッド投資での金儲けではなく、「日本を元気にする知的財産戦略」の一環として日本の産業再生までが約束事で公金投資が認められた事業である。しかし、こうした公的資金投資の社会的意義より、自分たちへの2000万円のボーナスを優先されている。これは「国の金だから」という甘えに他ならない。

こうした無秩序経営が行われ、巨額国民財産を毀損していても、利益相反の取締役会、株主総会では何の問題もないとされて来た。さらには、官民ファンドと国の関係が明確に定められてていても、経済産業省も本来定められた行政の役割と責任を果たすことなく、国民に虚偽の説明を行い、国策クールジャパンの暴走の片棒を担いできたといえる。

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適法投資手続きにある瑕疵、経産官僚があらかじめ用意した大臣意見書

産業革新機構に関する法令には、経済産業大臣に対し出資先の対象事業者に対する意見を伺うことが定められている。

行政開示文書によると、平成23年6月27日に産業革新機構社長の能見公一氏(当時)が送った書面に対し、海江田万里経産大臣(当時)は同じ日の6月27日に「社会的意義を有するものとして高く評価できる」と回答している。ちなみに、能見氏と民主党の海江田大臣の関係であるが、能見氏はそもそも民主党が連れてきた社長であると政府関係者が発言している。

複雑な海外映画事業の書面と資料を受け取り、即日、その投資に成長性、革新性、社会的意義が認められると回答することは到底できるものではない。また、ANEWにおいては今日の結果が示す通り、映画ビジネスの専門性から見れば、事業そのものが一目でナンセンスだと判断できる虚業である。

すなわち法令で定められた大臣承認は形式的なものに過ぎず、経済産業省の関与が明らかなANEWは、「クールジャパン政策ありき」の官僚主導で行われた出来レース事業であったと考えるのが自然である。事実、経済産業省に対し行った情報開示請求の不服申し立てによって、あたらに「決済文書」なるものが存在していることが請求の2年後に明らかになった。この文書によると経済産業省は産業革新機構と口頭で投資決定の談合を行っており、意見伺いの当日に出す大臣意見を事前に複数用意していた。

このように、経済産業省が適法とした投資手続きには明らかな瑕疵があり、法令を軽視した経済産業大臣による職務怠慢も今日の結果を招いた一因であるといえよう。

 

 

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ANEWの不当廉売による日本IPの独占

官民ファンドガイドラインには、「競争に与える影響の最小限化」も定められている。しかし、ANEWが行ってきた業務は、ANEW決算にある過去の売り上げ高が示す通り、日本企業IPの英語資料を作り、契約、法務、交渉を無料で行い、さらには脚本家に係る経費までANEWが負担するというものになっている。

ハリウッド映画コンサルティングであれば、本来対価を得るべきサービスであり、これを無料で不当廉売し、さらには採算性を度外視しで、開発資金を公的資金で支援するお土産までつける。まして国策支援の看板をつけて業務を行えば、国内で独占的な立場を獲得できる立場になりえ、競争における影響は多大だったといえる。。

お墨付きを与える政府御用会議

ANEWには「コンテンツ強化専門調査会」と「知的財産本部、評価、検証、企画委員会」という政府会議も深く関わっている。

これらの会議は中村伊知哉氏が座長を務めており、同氏はANEWに言及した著書『コンテンツと国家戦略』角川出版から発売している。

「評価、検証、企画委員会」においてはANEWの検証を求める意見が委員から出されていた。しかし、ANEWを推進する「コンテンツ強化専門調査会」でも座長を務めた中村氏や、経営説明をしてきた経産省伊吹英明課長は、検証意見に一切答えることなくこれを聞き流していた。

結局、こうした会議は官僚たちの「私達こんなことにお金使いました」の発表会に過ぎず、無駄事業にお墨付きを与えるだけの御用会議化になっっている。

2016年末には内閣府に「映画の振興施策に関する検討会議』が組織された。2017年に施策方針が取りまとめられた。そこでは、新たな官民ファンドのクールジャパン機構を利用したリスクマネーの供給を行う施策を講じることが取りまとめらている。これは第2のANEWになりかねないか今から注視する必要があるように思える。ちなみにこの会議の座長もまた中村伊知哉氏が務めている。

経済産業省と産業革新機構の責任を追及せよ

私は、ANEW設立の発表直後から5年間に渡りその産業支援のやり方に警鐘を鳴らしてきた。そもそもロサンゼルスと虎ノ門にオフィスを構え、アメリカ支社にはANEW Productionsなる子会社まで作り、ころころ変わる専門性を持たない役員や経産省出向役員を雇い、売上高0円ながら数千万円のボーナスを計上するような経営で利益が出るような映画企画開発ビジネスなど最初から存在していない。しかしこんな法令無視の虚業が「日本を元気にする知的財産戦略」の大成果だと評価され、結果国民財産の大きな毀損を生んだ。

ANEWの問題は単なる損得の問題ではなく、ANEWにおいては「莫大な国富を国内のクリエイティブ産業に還元し、日本のエンタテイメントを再生する」までが公的資金投資に含まれていた約束である。日本のエンタテイメント産業には未だ問題は山積で、多くの「困った人」がいる。こうした働く「人」を無視し、国民財産を毀損させた国策の損失は、決して金銭的損失にとどまらず、日本のクリエイティブ産業の発展や国際競争力という別の大きな損失を生んでいることになる。

個人的な意見としては、民間でファンドマネージャーが顧客の18億円を毀損させたら、その者の将来にこの分野の職があるとは思えない。ましてや毀損した原因が自らが設計し、経営する会社に100%投資した結果なら、出資者から訴えられるのが当然である。仮に民間の映画プロデューサーが「日本ではうちしかできないことだ」「3年で利益が出る」、経営途中で「撮影準備中の映画があり経営は順調だ」と偽り、金集め、5年後に映画すら存在していない場合、映画投資詐欺の罪で刑務所行きもありうる話だと思う。

ANEWへの投資については、規制、監督する立場の経済産業省が出向し、法令に反し偽りの業績報告を国民に対し行い、国会では虚偽の経営報告まで行っていた。法令、ガイドラインこそあるものの、現状では、それを行政がそれを歪め、本来定められた国民に対する説明責任も全て闇の中にできるのが官民ファンドの制度になっている。

映画ビジネスにおける「需要」と「供給」とは、日本の公的資金で食べるための「需要」と「供給」ではない。形骸化された民主主義制度を作り上げ、国民財産の損失を自己利益にかえるような不適切な投資が「クールジャパン万歳」「日本再生のて目の適正な投資」というのはあってはならない事である。

ANEWの件おける経済産業省と産業革新機構の責任追及は絶対に必要であろう。

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「日本におけるプロダクションインセンティブ設置」についての提言

内閣府知的財産戦略本部に「日本におけるプロダクションインセンティブ設置」についての提言を提出しました。

内閣府リンク:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ikenbosyu/2017keikaku/pdf/teigen.pdf

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知的財産産業とは「人」が富を生む産業です。日本が知的財産分野で国の経済を牽引し、この産業で食べていくということは、日本のコンテンツ製作環境に「新しい金」の投資を取り込み、次世代にわたり、産業を支える創作現場に質のいい産業雇用の創出と経験を生むことが重要であると考えます。またソフトパワーによるインバウンドや日本のイメージ向上など波及効果を得たいのであれば、まずこの国で継続的にインバウンド効果を生む良質のコンテンツが生まれる環境がなければそもそも達成できないものであります。

しかし、エンタテイメント産業がグルーバルビジネスになっている今日において、日本の「作る側」の製作環境は、90%以上が国内の「古いお金」によって賄われ、その「古いお金」も受注削減やクライアントの経費削減の影響を受け先細りしています。一方、国際競争が極めて激しい世界のコンテンツ投資市場において日本は「新しいお金」の獲得に失敗しています。その大きな原因は、日本に「プロダクションインセンティブ」という政府支援制度がないことによるものです。

国際フィルムコミッショナーズ協会(AFCI)によると、今世界にあるクリエイティブ産業の製作費消費市場(production spending)は年880億ドル(約10兆円)に上り、また、PwCの試算では中国やラテンアメリカなど新興市場の成長もあり、2019年には1046億2000万ドル(約11.71兆円)に到達すると推計されています。[1]

このような市場に対し、映画、TV、アニメ、ゲームなどクリエイティブ産業振興を戦略に打ち出している国や都市は、プロダクション誘致による投資獲得を実現し、この分野の産業を経済振興、雇用創出、ならびにクリエイターの所得向上、実地経験を通したスキル開発、制作インフラの成長等に繋げています。

例えば、2016年、映画、TV、アニメ分野の投資誘致先進国であるイギリスは、1994年の統計開始以来過去の製作費消費誘致を実現しています。2017年1月26日に英国公的映像機関「ブリティッシュ・フィルム・インスティチュート」が発表した「2016年イギリスにおける映画、大型予算TVドラマ、アニメ製作の統計」[2]によると、2016年の製作費誘致は前年比13%増となる15億9600万ポンド(約2266億円、£1=¥142円)で、そのうち大部分の85%に当たる13億4900万ポンド(約1915億円)は海外からイギリス産業現場に誘致された「新しいお金」になっています。

こうしたイギリスの成功の一番の要因は、今やクリエイティブ製作投資の意思決定において絶対必須となっている世界でも特に戦略的かつ潤沢な「プロダクションインセンティブ」という政府支援制度が投資の呼び水になっているからです。「プロダクションインセンティブ」とは、自国や地元都市への製作費消費や地元雇用への投資に対し一定割合を助成する制度ことで、現代のプロデューサーの資金調達のプロセス、コンテンツ投資の意思決定の部分において必要不可欠な要素になっています。

イギリスのケースの場合、もしこれがイギリス国内の「古いお金」だけで創作をしていた場合、国内の製作環境に回る製作費消費はたったの350億円になります。つまり、残りの85%の「新しいお金」の獲得こそが、国内のクリエイターたちへの質のいい産業雇用の創出、実地を通した人材育成と経験、インフラの成長、さらにはVFX、アニメーションおよびVRなどの革新的技術開発を生んでいる要素になります。

一方、こうした政府支援の枠組みの術を持たない日本は「新しいお金」獲得の国際競争に劣っています。その結果、政府調査にもまとめられているように、長年に渡り、アニメーターら産業現場で働くクリエイターたちは困窮し、この産業の担い手である次世代の若者が使い捨てで酷使されている根本的な構造問題の改善に至っていません。これは2016年3月23日発表の経済産業省の「コンテンツ関連産業指数」によると、作り手側の「制作」は下降傾向にあるというまとめや、帝国データバンクが2017年1月24日に発表した「映画・映像関連企業の業績・倒産動向調査結果」にある「制作」の倒産件数増加にも表れています。

「プロダクションインセンティブ」制度は、2016年時点のアメリカで潤沢な制度を備え、コンテンツ制作のハブを担っているニューヨーク、カリフォルニア、ルイジアナ、ジョージアを含む37州が打ち出しており、加え、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも戦略的な支援制度を備え世界有数のコンテンツ投資の誘致国となっています。さらに、イギリス、アイルランド、フランス、マルタ、イタリア、オーストリア、ドイツ、エストニア、ハンガリー、リトアニア、セルビア、マケドニア、チェコ、クロアチア、ポーランド、ノルウェー、アイスランドの欧州国だけでなく、南アフリカ、UAEにも近年は投資が集まり、その効果が証明されています。また日本を取り巻くアジアも同じで、マレーシア、タイ、韓国、台湾に加え、2016年は中国青島市が世界最高水準に並ぶ40%のインセンティブ制度を発表しています。

このような世界競争の環境下に置かれている日本のクリエイティブ産業におきましても、自国作品の製作費レベルを上げるだけでなく、世界の「新しいお金」からの日本コンテンツ投資への文化的ならびに商業的興味の誘引し、また産業を支える重要要素である日本で働く「人」の所得向上や経験を生むためにも、既に世界のクリエイティブ産業において速効性があり、かつ有意義な経済効果が証明されている「プロダクションインセンティブ」設置は急務だと考え、ここに日本の知的財産分野で日本を豊かにするために必要な「プロダクションインセンティブ」制度設置を提言します。

[1] Filmed entertainment: Key Insight at glance

https://www.pwc.com/gx/en/global-entertainment-media-outlook/assets/2015/filmed-entertainment-key-insights-1-growth-around-the-world.pdf

[2] British Film Institute: Film and high-end television and animation programs production in the UK: full year of 2016

http://www.bfi.org.uk/sites/bfi.org.uk/files/downloads/bfi-film-and-other-screen-sectors-production-in-the-uk-2016.pdf

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クールジャパン・コンテンツ海外展開補助金282億円の闇:映像産業振興機構による基金管理事務費不正請求と年度報告書の改ざんによる8億5000万円公金詐取疑惑

「1円たりとも税金の無駄がないことを確認しています」経済産業省

この国では巨額予算がつくとそれがすぐ税金の無駄の温床になる。今、政官民で熱に侵されているクールジャパン政策もその一つである。これまでクールジャパン・コンテンツ海外展開促進事業には282億円もの税金の交付が決定している。この補助金に関して経済産業省メディアコンテンツ課の今村氏は次のように説明した。「経済産業省は1円たりとも不適切、無駄な税金がないことを確認しています」しかし、この言葉とは裏腹に経産省への情報公開により基金設置法人による架空の管理事務費請求、年度会計報告書改ざんが判明し、経済産業大臣の承認のもと少なくとも8億5000万円もの税金が不正に支払われている疑惑が発覚した。

経済産業省の開示文書:(PDF)

平成27年度映像産業振興機構への補助金に関するすべての文書

クールジャパン助成金管理事業は40億円のビッグビジネスblog_2

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クールジャパン関連のコンテンツ海外展開促進事業(J-LOP、J-LOP+、JLOP)には、これまで平成24年補正(経産省123億円、総務省32億円)、26年補正(経産省60億円)、27年補正(経産省67億円)と総額282億円が交付決定されている。そして、その巨額基金管理事業の全てを制度設立時に経産省が概算請求の資料に受託想定先と記載した特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)がその通りに受託している。なお、27年度補正予算時公募数は2件である。また、この補正予算に関し政府に予算提言を行った経団連コンテンツ部会の部会長依田巽氏は映像産業振興機構の幹事理事を務めている。

28年第2次補正においても60億円の予算がつき、これも映像産業振興機構が受託している(J-LOP4)(*2017年1月4日加筆)

このクールジャパン補助金基金設置法人には総事業予算の中から平成24年補正予算J−LOPで28億2491万円、平成26年補正予算J-LOP+で3億円、平成27年補正予算JLOPで7億9000万円が割り当てられている。つまり「クールジャパン」を運営すること自体が公的映像系法人にとって格好のビッグビジネスになっている。

映像産業振興機構においては間接補助事業者に当たる広告代理店株式会社クオラスの社員が出向(*経産省メディアコンテンツ課はのちに出向ではなく業務提携であったと説明を変更)するなどの癒着や、利益相反で管理する補助金に手をつけ運営したジャパンデイプロジェクトなど、不適切な基金管理実態もこれまで確認されている。

(関連記事:クールジャパンが生む不透明なカンヌ映画祭事業への補助金1億円と経済産業省の隠蔽体質クールジャパン補正予算に巣食う映像産業振興機構とジャパンデイプロジェクトにある経済産業省の嘘

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日本を元気にするコンテンツ総合戦略60億円の負の遺産:ALL NIPPON ENERTAIMENT WORKS4年間の杜撰な経営実態と公的資金投資評価

設立から4年、投資決定時の将来見通しは破綻

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「日本を元気にするコンテンツ総合戦略」として経済産業省が企画し、2011年に産業革新機構が設立した株式会社ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS(ANEW)には、4年以上が経つ今も映画は1本も存在していない。そして投資決定時にあった「設立3年で継続的な利益を生む」という将来見通しは乖離どころか、もはや破綻状態にある。

国民財産の投資を適切に行うための担保となる法律、第三者機関の公平性、独立性は形骸化し、関係者が利益相反で行っている公的資金運用のルールを無視した経営体制は、天下り監督官庁の経済産業省によって「適切な投資」と承認されている。これは起こるべくして起きている公的資金60億円の毀損であり、クールジャパン政策における国レベルの腐敗を映し出している。

 

2012_ANEW_2(2012年知的財産推進計画より)

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なぜクールジャパンの思い込み施策と税金の無駄は繰り返されるのか?:経産省平成27年度補正予算67億円と日本IP海外展開についての正しい知識

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日本政府は2018年までにコンテンツ輸出を3倍にする計画を立てている。しかし「日本はすごい、あとは売り方の問題」というクールジャパン施策の思い込みは適切な映画産業支援への思考を蝕んでいる。一方で「人」を育むことを無視し続ける「思い込み戦略」に付き合わされる日本のクリエイティブ産業はたまったものではない。

平成27年12月18日、経済産業省は平成27年度補正予算案を発表した。その中でメディアコンテンツ課は「地域コンテンツ海外流基盤整備事業」に66億9000万円を計上している。この事業は平成24年の補正予算以降にこれまで215億円を費やしてきたプロモーション、ローカライズ支援事業(J-LOP)に加え、権利許諾を円滑化するための権利情報データベースを作ることを目的としている。

またこれを報じた米ヴァラエティ紙によると、複数の企業からなる製作委員会制度によって複雑化している権利者情報を海外バイヤーに対して明確に示すとしている。

データベース整備があれば日本の知的財産に突如高値が付いたり、頻繁な取引が促され、コンテンツ輸出が促進されると信じ込む思考法、これは日本の政府会議室だけに通用する独自のの「思い込み」である。この「思い込み」は専門性や適切な分析も欠き、問題の解決策のためにデザインされていない。さらに「思い込み」が作る法外な税金の不必要な事業は、しばしば天下りの温床になっている。

世界最大のデータベースは既に存在

果たして年間何人の海外バイヤーがこう言った情報を欲しているのか?そして日本の権利者情報は本当に取得が困難な場合の方が多いのか?そして日本独自の権利データベースは本当に知的財産の活用における問題の解決策なのか?

そもそも映画、TV番組、アニメ、ゲームを網羅する世界最大のデータベースは存在している。データベースの問題は巨額の税金を使わなくともアマゾン子会社のインターネットムービーデータベース(IMDB)を利用することで簡単に解決することができる。

IMDBとは世界の産業プロフェッショナルの常識となっている情報ツールであり、過去の作品から、現在企画開発中の作品の製作会社、プロデューサー、監督から俳優、クルーのビジネスコンタクトを入手することができる。またタイトルによる検索だけでなく、製作国「Japan」を選択することで、日本製作作品に絞って調べることも可能である。

もし日本の著作者が海外バイヤーに権利者情報を知って貰いたいのであれば、当事者自身で最新の情報に更新すればいいだけである。有料サービスであるIMDB Proの料金は月額14.99ドルか年間149.99ドルである。また30日間の無料体験も設けている。こうした産業に関わる人が知る当たり前の民間努力で、経済産業省の億単位の事業の問題は解決することができる。

また海外マーケットにおいてはCINANDOというデータベースがあり、作品やバイヤーの参加スケジュールやコンタクトのほか、オンラインで試写やアポイントまでとることができる。 なぜクールジャパンの思い込み施策と税金の無駄は繰り返されるのか?:経産省平成27年度補正予算67億円と日本IP海外展開についての正しい知識 の続きを読む

クールジャパン補正予算に巣食う映像産業振興機構とジャパンデイプロジェクトにある経済産業省の嘘

今年のカンヌ映画祭事業を実施したジャパンデイプロジェクト事業に流れる巨額補助金の説明は極めて不透明で、矛盾に満ちたものだった。

ジャパンデイプロジェクトは「経済産業省の支援事業」発表されていた。また、運営責任者である映像産業振興の事務局長も経済産業省の補助金であると回答していた。

しかし、1つの事業を終え、ジャパンデイプロジェクトプロデューサー選出にも関与していた経済産業省に対して情報公開請求をすると、全く別の補助金であるために公文書は一切作成も取得もしていないと不開示決定を出した。

また、経産省が説明するその助成金の交付決定履歴にジャパンプロジェクト運営の名前はなく、また事業実施期間中もそのような発表やクレジット表記をしていなかった。

さらに、映像産業振興機構の今年度の予算計画にもジャパンデイプロジェクトを運営する規模の予算は計画されていない。

すなわち、当初の計画では経産省の説明する補助金とは別の補助金が存在していたと考えられる。

ジャパンデイプロジェクトにおいては補助金の流れの不透明だけに留まらず、その運営構成員も不可解なものであった。

自らが預かる巨額公的基金を管理する映像産業振興機構には今回のジャパンデイプロジェクトの運営の構成員となった広告代理店社員が出向し、5つ海外プロモーションイベントを「垣根を破り」と不自然に1事業にまとめ、自らの事業に巨額補助金を承認させていた。

これらを矛盾点を検証すると、経済産業省と巨額公的基金を預かる映像産業振興機構は、内部の裁量でクールジャパン補正予算でついた補助金会計を自由に操作できる構造が存在する。

経済産業省は補助金をすり替えることで責任逃れができ、またそれ理由に国民が持つ不可侵権である国民の知る権利を侵害し、虚偽の公文書まで作成し情報を隠蔽したことになる。

2ヶ月間にわたり情報削除など様々な工作をしてきた不可解のジャパンデイプロジェクト事業であるが、8月12日に3つイベントの中止と事業終了を発表した。

情報をひた隠しにする経済産業省と基金管理団体の映像産業振興機構が口裏合わせを別の補助金であったという既成事実を作り上げ「何も問題ない。全ては適正な補助金事業であった」と幕引きを図ろうとしている。

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コンテンツ海外展開促進事業助成金(J-LOP)

経済産業省が公文書で回答した結論によれば、自らが管理する155億円の基金を、基金管理団体映像産業振興機構とそこに社員を出向される広告代理店が結託し、秘密裏に企画する自分たちの事業に億単位の税金を執行できる事業であるということであった。

この補助金の承認には第三者委員会なるものが存在し、その第三者委員会は一般に公表することで補助金へのロビイング活動や不適切な癒着が助長されるとの理由で非公開となっている。

しかし、基金管理団体とそこへ出向する広告代理店であれば当然この第三者委員会に対してアクセスができる立場にあり、結果自分たちの事業に巨額補助金が承認されているなど、極めて公平性、透明性を欠く構造となっている。

この巨額補助金とはクールジャパンの補正予算でついたコンテンツ海外展開等促進事業助成金(J-LOP)であり、経済産業省が123億円、総務省が32億円、合計155億円の基金のことである。

この基金はローカライズのほか、海外イベントなどのプロモーション経費の2分の1まで助成する助成金である。

J-LOP基金は平成24年3月に設立、平成27年時点の残高は103億円で、経済産業省の説明ではこの全額を今年の12月使いきり終了する予定である。

映像産業振興機構には今回の155億円基金の他、追加補正予算による追加60億円の基金も存在する。

地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業費補助金

http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150316005/20150316005.html

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ジャパンデイプロジェクトの終了

日本にはたくさんのエンタテイメントの種があります。本プロジェクトを通して、日本のコンテンツや文化の種を世界中に撒くとともに、記憶に残るような日本文化体験を提供することで『世界と日本』『人と人』の出会いがより 広く、深く、密になっていくことを心から期待しています / プロデューサー小山薫堂

日本のエンタテイメントの種を世界中に撒くとしたジャパンデイプロジェクトは、台湾漫画博覧会の開催期間を過ぎた8月12日に、カンヌ映画祭、パリジャパンエキスポ以外の実施予定のイベントを全て中止し、事業を終了したと発表した。

以前から事業計画が破綻した予兆はあった。

カンヌ映画祭後、すぐにカンヌMIPCOM、東京のイベントが削除された。運営にあったクオラス、アサツーDK、映像産業振興機構、プロデューサー小山薫堂氏等の責任者の名前、そして「本プロジェクトは、経済産業省の支援を受け、実施しています」の一文がホームページから一斉に削除されていた。

またジャパンデイプロジェクトに来賓として招かれ、また海外映画関係者と映画政策についての情報交換を行うためにカンヌに出張した経済産業省メディアコンテンツ課柏原恭子課長はすでに大臣官房グローバル経済室長に異動になっている。

すなわこの事業の責任者たちは事業終了発表前にすでに姿を消していた。

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不透明なカンヌ映画祭事業補助金1億円と経済産業省の隠蔽体質

今年の日本政府のカンヌ映画祭事業は内容だけでなく、巨額な補助金額と不透明なものであった。

5年ぶりのカンヌ映画祭パビリオン出展、また高額な補助金事業にもかかわらず公募、企画競争はなく、また経済産業省が企画、実施の責任者を補助金を申請する事業者に推薦、その後申請内容、予算が承認を受けるなど極めて不可解な税金の使い方をみせた。

また経済産業省はカンヌ映画祭事業に関わる情報を不開示とし、またこれに関わる一切の文書は存在しないと回答した。

さらに今、映画産業のめまぐるしい環境変化、国際競争をよそに、クールジャパンを理由に突然降って湧いたかのようなカンヌ映画祭補助金事業に関わった責任者たちは一斉に表から姿を消している。

運営が関係者全員をホームページから一斉削除

2015年のカンヌ映画祭では近年の日本政府の取り組みでは類を見ないほど派手な税金使いを見せた。カンヌ映画祭事業単体だけでもその額は清算確定前の予定額で1億200万円である。

今年のカンヌ映画祭事業は経済産業省の補助事業であるジャパンデイプロジェクト事業の一環として行われた。

ジャパンデイプロジェクトの実施団体は株式会社クオラス、株式会社アサツー ディ・ケイの広告代理店2社と特定非営利法人映像産業振興機構の構成員からなるジャパンデイプロジェクトコンソーシアムである。

そして一連の企画、実施を指揮したプロデューサーは経済産業省の推薦の中から映像産業振興機構が選任した小山薫堂氏である。

経済産業省商務情報政策局メディアコンテンツ課の説明によれば、ジャパンデイプロジェクトコンソーシアムからカンヌ映画祭事業を含む7月のパリのジャパンエキスポ、台湾の漫画博覧会、10月のカンヌMIPCOMと東京事業という総合イベント事業に対して補助金の申請があり、それを第三者委員会が内容、予算を審議後、補助金を承認し事業開始に至ったという。

つまりジャパンデイプロジェクトとは、カンヌ映画祭事業の1億円だけでなく、その後の4イベントにもじゃぶじゃぶと補助金が約束されている事業である。

しかし現在ジャパンデイプロジェクトのホームページから、経済産業省、実施団体、プロデューサーと1億円のカンヌ映画祭事業に関わった責任者の全ての名前が削除され、その痕跡が消された状態になっている。

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(*7月31日の情報開示決定および経産省職員の説明時点での更新)

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